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最近の事例から見る、映画や書籍のタイトル名からなる商標の登録可否について

最近の事例から見る、映画や書籍のタイトル名からなる商標の登録可否について

商標が、「他人の周知商標又は周知標章と同一又は類似のものであり、そのために、関係公衆に混同を生じさせるか、若しくは当該周知商標又は周知標章の識別性又は名声を減殺するおそれのあるもの」(著名商標)である場合は、台湾商標法第30条第1項第11号に該当し、登録を受けることができない。

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商標が、「他人の周知商標又は周知標章と同一又は類似のものであり、そのために、関係公衆に混同を生じさせるか、若しくは当該周知商標又は周知標章の識別性又は名声を減殺するおそれのあるもの」(著名商標)である場合は、台湾商標法第30条第1項第11号に該当し、登録を受けることができない。又、この規定への適用を理由に、無関係な第三者が登録出願した、映画や書籍のタイトル名からなる商標が拒絶されたケースが存在している。以下に、いくつかの例を列挙する。 
出願番号 商標 指定商品 拒絶査定番号
104074893
(アバター)
自動車、車輪、二輪自動車の部品及び組立部品、二輪自動車、電動乗物など T0374279
104078414
(フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ)
性的刺激補助具;性的なバイブレーター、人工陰茎など T0374186
105076894
(カンフー・パンダ)
ヘアドライヤー、フェーススチーマー、パーマネント用ランプ、蒸気発生器、消毒装置(医療用のものを除く。)、殺菌装置(医療用のものを除く。)など T0382824
 
但し、2017年公開の韓国映画「神と共に」とは無関係なとある台湾企業が、2018年に、該映画タイトルの中国語訳である「與神同行」を商標登録出願し、途中では一度商標法第30条第1項第11号の規定により出願が拒絶されたが、それを不服とし訴願(不服の審判)を提起した結果、原処分が取り消されて最終的に登録できるようになった。以下、このケースの概要を紹介する。
出 願 日:2018年8月21日
出願番号:107953983
登 録 日:2020年4月16日
登録番号:02055066
所 有 者:隆成興貿易有限公司
指定商品: 第20類 家具、棺、骨壷、木製美術品、プラスチック製美術品、木製彫像、プラスチック製彫像、扁額、額縁、写真用額縁、プラスチック製包装容器。
第35類 輸出入業務の代行、企業の管理に関する助言、商業又は工業の管理に関する援助、競売、化学製品の小売・卸売、建築材料の小売・卸売、葬祭用品の小売・卸売、宗教用品の小売・卸売、医療器材の小売・卸売。
第45類 星占いサービス、葬儀の執行、宗教集会の運営、霊的・スピリチュアルな視点による身の上相談、知的財産権に関する申請及び関連事務の処理の代行、法律サービス、商社登記に関する手続きの代理、不動産登記に関する手続きの代理、系図の研究。
経緯:
(一)出願審査の段階で
知的財産局は主に、次の理由を示して拒絶査定をした。
1. 「與神同行」は、2017年公開の韓国のファンタジー・アクション映画「神と共に」の中国語訳タイトルであり、また、該映画は台湾での総興行収入が約5.13億台湾ドルを記録し2017年度のランキング2位を獲得したことから、「與神同行」は台湾の消費者が熟知する著名商標となっていることを認めた。
2. 故に、出願第107953983号は、該著名商標の識別力を希釈化させる虞があるものであるため、商標法第30条第1項第11号の規定により、その商標登録出願を拒絶すべきである。
(二)訴願(不服の審判)の段階で
経済部訴願委員会は主に、次の理由を示して知的財産局の原処分を取り消した。
1. 「與神同行」が商標として、販売の目的でその商品又は役務に使用されたことを示す事情が見当たらなかったと共に、原処分では、「神と共に」の原作漫画或いは映画配給会社が、その漫画グッズや映画グッズに「與神同行」を商標として使用したことを示す証拠も挙げられていないことから、引用された「與神同行」は、既にわが国で商標として使用されたことを認め難い。
2. これにより、わが国の消費者は、「與神同行」との語を、商品又は役務の出所を表示する商標ではなく、漫画又は映画のタイトルとしか見なしていないので、該タイトルがわが国で相当な知名度を有する漫画又は映画の題名であるからといって、引用された「與神同行」が著名商標となっていることの根拠とはならない。
3. 故に、出願第107953983号は、商標法第30条第1項第11号の規定を適用するものとは言えないので、原処分を取り消し、原処分機関は改めて適法な処分をなすべきである。
(三)知的財産局に差し戻して
その結果、出願第107953983号は最終的に、登録査定となった。
 
▼筆者の見解
近年では、知的財産局は有名なテレビドラマや映画のタイトルを著名商標と認定し、たとえ係る作品の権利保有者が該タイトルを商標登録していない、若しくは関連グッズが販売されている証拠が不十分であったとしても、広く認識されているテレビドラマや映画のタイトルであれば、商標法上の保護を自発的に与える傾向にある。
但し、上記「與神同行」の件で、経済部訴願委員会は「神と共に」の漫画又は映画の高い知名度を否定してはいないが、直ちに該知名度をそのタイトル名を商標とした場合の知名度と同一視できるわけではないとの見解を示しており、即ち、著名商標となっているか否かの認定は、依然として具体的な商品又は役務についての実際の使用証拠により判断しなければならない、ということである。
これに従って、もし有名な映画や書籍などの作品の権利保有者がそのタイトルを商標として使用する意図はない場合、無関係な第三者が登録出願した映画や書籍のタイトル名からなる商標は登録できることが今後の傾向になっていくかもしれなく、観察し続ける必要があると思う。
一方、映画や書籍などの自己作品の知名度に他人が便乗しようとする不正行為を防ぐために、作品の権利保有者は、積極的に商標登録出願をすることをおすすめするほか、他人に先に出願された場合、商標法第30条第1項第11号の規定に基づいた主張をサポートするには、実際の使用証拠を提出した方が得策であると考える。 
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