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BY 林志霈
一、前書き
台湾の現行の審査基準によると、意匠の図面に関しては厳しく規定しており、例えば、図面を、工業製図法を参照して、墨線図、コンピュータグラフィックス又は写真で表示すべきであり、意匠の中で「意匠を受けようとする部分」を表示するために墨線で表示された場合、実線で各図面を描かなければならず、コンピュータグラフィックス又は写真で表示された場合は、工業製図法を参照して各図面を表示しなければならない。また、混同しないように、図面には意匠出願の対象と関係のない文字を記載してはならず、6面図を墨線図、コンピュータグラフィックス又は写真のうち2つ又は3つを混合して使用することはできない。さらに、その意匠に色彩の主張がない場合、図面は墨線図、グレースケールのコンピュータグラフィックス、又はモノクロ写真の方法で表すべきであることが規定されている。
審査基準において、意匠の図面は、専利出願に係る意匠を十分に開示することに寄与するために、参考図を加えることができると更に規定されており、例えば、意匠とその他の物品又は使用環境との関係を表すための参考図などがある。開示された図に「参考図」、「使用状態参考図」と付した場合、当該図の目的は、審査官の審査時の参考としてのみ提供され、その表示内容は実線又は破線等の上述に規定された開示方法に限定されず、当該図に専利出願に係る意匠と関係のない、その他の物品又は使用環境が含まれているか否かを斟酌する必要もない。図面に参考図と付した場合は、専利出願に係る意匠範囲とすることはできず、意匠登録後に、意匠権の範囲を判断する根拠とすることもできないので、如何なる製図法、ライン、符号を使用することが可能で、意匠の実質的な判断に関わることはない。上記のように、意匠出願における参考図は意匠を受けようとする部分ではないので、出願人としては、参考図をうまく運用して、意匠の特徴を強調できる。以下、数種類の参考図の応用を紹介する。
二、参考図の応用例の説明(図面付き)
(一)意匠に係る物品、使用環境、使用方法の説明の補助
意匠の図面は主に保護の対象を描くものであるが、保護の対象のみを観察しても、その用途、使用環境、使用方法、または他の物品との間の差異性を明確に把握できない可能性がある。この場合、参考図を利用して、係る物品、使用環境、使用方法を表現できる。
1、台湾のD201212号意匠(装飾カバー)は、電動バイクの後輪の外側に設置されるものであるが、意匠の図面に装飾カバーのみを示した場合、装飾カバーが如何に電動バイクの後輪に設置されるかを容易に理解できない恐れがあるので、当該装飾カバーに係る物品と使用環境を説明するための参考図を加えた。
D201212の斜視図1 | D201212の参考図 |
D209411の斜視図 | D209411の参考図3 |
D203218の斜視図1 | D203218の参考図 |
意匠の図面を墨線図またはモノクロ写真で表示した場合、製品の本来の外観をうまく認識できない可能性があり、この際、実際のサンプルの写真又はカラー写真を参考図とすることができる。参考図は、審査の参考としかならなく、実際に意匠を受けようとする部分ではないので、意匠の保護範囲の縮減にならないと共に、意匠出願の物品と実際の製品との対応関係を容易に理解できる。
1、台湾のD189950号意匠(眼鏡)は、色彩が意匠を受けようとする部分でないので、モノクロ写真を図面とするとともに、カラー写真の参考図を加えて、実際のサンプルの色合わせを表した。
D189950の斜視図 | D189950の参考図 |
D205926の斜視図 | D205926の参考図 |
変化する外観を有する物品の出願時に、変化した外観を「使用状態図」に、例えば、折畳可能な椅子の折畳状態を使用状態図にすると、「使用状態図」も、意匠を受けようとする部分に属するので、受けようとする意匠は、「通常」と「折畳」との2つの状態を同時に含むことに限られてしまう。変化する外観を有することによる保護範囲の縮減を回避し、また、変化する外観を有することを表したい場合、「参考図」として表すことができる。
1、台湾のD190075号意匠(化粧品の容器)は、使用の際に容器を回して内部に隠れるノズルを露出させて使用可能であるが、ノズルが容器から露出する使用状態によって保護範囲を縮減させることは好まず、一方、内部に隠れるノズルを回して露出させることが可能である使用状態を同時に表現したいので、ノズルを化粧品の容器から露出させる使用状態を参考図にした。参考図は、意匠を受けようとする部分ではないので、ノズルの露出状態により保護範囲を縮減させることを回避できると同時に、「ノズルを露出させて使用可能」との製品の特徴を表すことができる。
D190075の斜視図 | D190075の参考図 |
D208294の斜視図 | |
D208294の参考図1 | D208294の参考図3 |
台湾の現行の審査基準では、参考図を審査の参考とし、それを意匠請求の範囲の一部を定義することも、意匠権の範囲を確定する根拠とすることも禁止されているので、意匠出願の際に、「意匠を受けようとする部分」、「意匠を受けようとしない部分」、「色彩を主張するか」、「変化する外観を有することを主張するか」などを前もって決めるほか、同時に製品の特徴に応じて参考図を柔軟に応用することもできる。意匠に係る物品、使用環境、使用方法の説明の補助のみならず、参考図によって意匠請求の範囲でない色彩の配置や変化を有する外観を開示して、意匠の特徴を十分に表現した上で、参考図が開示した内容による意匠の保護範囲の縮減を回避できる。
ただし、参考図の内容は、請求する意匠と直接な関連を有することが必要であり、全く無関係の内容を参考図としてはならない。全く無関係の内容を参考図として開示した場合、参考図の削除を求められる審査意見を受け取ることになる。
※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。
参考資料:
1、台湾の審査基準第3編 意匠の実体審査
2、台湾意匠D201212、D209411、D203218、D189950、D205926、D203803、D190075、D208294