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台湾における現行の加速審査プログラムの概要

台湾における現行の加速審査プログラムの概要

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BY 編集部

台湾知的財産局(TIPO)は、特許権の早期取得を支援するため、多様な加速審査プログラムを導入しています。従来から運用されている「特許加速審査(AEP)」、「特許審査ハイウェイ(PPH)」、「支援利用特許審査ハイウェイ(TW-SUPA)」に加え、近年新たに「産業協力特許審査面談試行プログラム」、「新興産業向け積極型特許審査試行プログラム」を追加しました。さらに2023年には「特許出願再審査加速プログラム(AEPRe)」、2025年には「女性名義特許出願の加速審査試行プログラム」を新設しました。以下にて各プログラムの概要を紹介します。

特許加速審査(AEP)
AEPは、以下の4つの事由のいずれか1つに該当する場合に加速審査を申請することができるプログラムです。

事由1:「外国対応出願が既に外国の特許庁において実体審査を経て特許査定となったもの」
事由2:「その対応出願は未だ査定されていないが、米国、日本または欧州特許庁の何れかの特許庁から、審査意見通知及び検索報告を受けているもの」
事由3:「出願人が商業的実施を予定しているもの」
事由4:「グリーンエネルギー関連発明であるもの」

事由1と事由2の主な違いは、事由2が米国、日本、欧州の特許庁からの未だ査定されていない通知書や検索報告のみを認めるのに対し、事由1は審査を行う特許庁を制限していないものの、実体審査を経て特許査定となったものであることを求める点です。

また、事由3と事由4については、理由を具備するだけでなく、申請費用を支払う必要があるのに対し、事由1と事由2については申請費用を支払う必要はありません。

特許審査ハイウェイ(PPH)
特許審査ハイウェイ(PPH)には、「一般型PPH(Normal PPH)」と「強化型PPH(PPH MOTTAINAI)」の2つのタイプがあります。

一般型PPHとは、第一出願庁に出願した第一出願(先願)が審査を経て特許査定となった場合に、その審査結果を第二出願庁に提出することで、第二出願庁に出願した第二出願(後願)の審査を加速させるプログラムを指します。

強化型PPHとは、一般型PPHにおける先後出願庁の制限を受けず、いずれかの出願庁において実体審査が行われ、請求項の一部又は全部が特許可能と判断された場合、その審査結果を他方の出願庁に提出することにより、他方の出願庁における対応出願の審査を加速させることができるプログラムを指します。

現在、台湾と米国との間では一般型PPHが適用されており、台湾と日本、スペイン、韓国、ポーランド及びカナダとの間では強化型PPHが適用されています。さらに2025年には台湾とフランスとの間で強化型PPHが新たに開始され、PPHの国際的な提携関係はさらに拡大されました。

支援利用特許審査ハイウェイ(TW-SUPA)
支援利用特許審査ハイウェイ(TW-SUPA)は、TIPOが独自に提出した特別なプログラムです。

このプログラムは、TIPOを第一出願庁とする出願を基礎とし、その出願を優先権の基礎とする対応出願を、強化型PPHの提携関係にある外国特許庁(日本、スペイン、韓国、ポーランド、カナダ、フランス)に提出する場合、申請者は、TIPOにTW-SUPA申請を行うことでTIPOの審査を加速できます。そして、TIPOにおいて審査を行い、少なくとも1項の請求項が特許可能と判断されれば、申請者はその結果をもとに提携関係にある外国特許庁にPPH申請を提出し、外国対応出願の審査を加速することができます。

簡単に言えば、TW-SUPAは、申請者がPPHを通じて外国特許を迅速に取得することを支援するものです。

産業協力特許審査面談試行プログラム
本プログラムの目的は、審査官が先端技術の内容を明確に理解できるようにし、審査の効率と品質を向上させることにあります。したがって、この審査加速プログラムは、技術内容が「先端技術」に該当する出願にのみ適用されます。

また、このプログラムは2026年12月31日まで試行される予定であり、試行期間中において、TIPOは審査能力を考慮し、プログラムの変更または終了をすることができます。

「先端技術」について、TIPOが申請者の参考のために、以下の分野を示しています。例えば、「幹細胞再生医療」、「医療情報学」、「Micro LEDディスプレイ」、「量子ドット太陽電池」、「ニューラルネットワーク」、「量子情報」、「量子コンピュータ」、「GAA FET 3nmプロセス」、「チップパッケージングプローブの精密化」、「回転積層グラフェン」、「GaN/SiC第3世代半導体」、「AI(人工知能)」、「IoT(モノのインターネット)」、「ビッグデータ」、「ブロックチェーン」、「3Dプリンティング」、「5G(第5世代移動通信技術)」など、また、他の審査官が個別に判断した技術も含まれます。

このプログラムは、申請者が自主的に提案することも、審査官が自主的に提案することも可能です。審査官が先端技術の出願をより理解するために面談が必要であるとともに、面談時に、該出願に関連する技術者が出席し、申請者が先端技術出願の技術内容を審査官に説明する必要があります。審査官は、面談後に審査結果通知を発行します。

新興産業向け積極型特許審査試行プログラム
本プログラムの目的は、新興産業が早期に特許を取得できるようにすることにあります。したがって、この審査の加速プログラムは、「新創会社(スタートアップ企業)」の資格を満たす申請者にのみ適用されます

「新創会社」とは、設立から8年未満の会社、過去2年以内に国家のイノベーション賞を受賞した会社、またはTIPOが政府の科学技術発展計画に基づいて委託した実行機関に指導された会社を指します。なお、このプログラムは法人である申請者のみが利用できます。

また、このプログラムは申請者が自主的に提案する必要があるとともに、特許出願の際に必ず特許代理人を委任する必要があります。さらに、このプログラムは面談が必要とされていますが、技術関係者の出席は必須ではありません

特許出願再審査加速審査プログラム(AEPRe)
「AEPRe」は、再審査段階にある特許出願のみに適用されます。TIPOから「間もなく再審査に入る通知書」を受け取った後から、再審査段階の第一回審査意見通知書を受け取る前までの期間に申請することができます。

さらに、必ず補正を伴うことが求められ、その補正内容は、以下のいずれかに限られます。
1.特許を付与しない事由を有する請求項の削除
2.初審査拒絶査定理由における、特許を付与しない事由のない従属項を、独立項に変更すること

「女性名義特許出願の加速審査試行プログラム」
このプログラムは、女性によるイノベーションを奨励するために設けられたものです。申請者が自然人であり、かつ申請者またはその一人が女性で、さらにその女性が発明者または発明者の一人である場合にのみ適用されます。また、申請は電子出願で行う必要があります。

結論:
以上の内容を踏まえ、特許法第52条第2項に基づき、「特許請求の発明は、公告日から発明特許権が付与され、証書が発行される」とされていることから、特許権は、出願が審査を経て特許査定されてから付与されるものであるため、審査期間を短縮できれば、出願人にとって大きな利点となります。

そして、TIPOは現在、多様な審査加速プログラムを提供しており、申請者は自身に適したプログラムを選択して申請することができます。これにより、申請者は早期に審査結果を確認でき、より柔軟性を持つ特許戦略を構築することが可能になります。さらに、TIPOから特許査定通知を受け取った後には、PPHなどのプログラムを利用して外国対応出願に対しても加速審査を申請することができ、これにより外国対応出願の審査効率を高め、早期に外国特許を取得することができるため、特許の活用が促進されます。

※本記事に関してご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。
 
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