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係争意匠の著作権侵害に関する判決

係争意匠の著作権侵害に関する判決

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BY 編集部

一、案件概要
(一)原告の主張:
系争意匠のオリジナルフィルターに付着した正面の金属パターンは、図形著作物として著作権で保護されており、また六面の金属パターンがフィルター本体に付着して構成される美術著作物も著作権の保護を受けています。被告は、系争製品を製造・生産し、台湾に輸入または輸入・販売を幇助・教唆しています。系争製品1および2は、系争正面図や系争立体物を複製または翻案したものであり、これにより原告の意匠権および著作権を侵害していると考えられます。

(二)被告の抗弁:
係争意匠は独創性を有しておらず、フィルターの外観に制約があるため、著作権法上の図形著作物として保護の対象とはなりません。また、係争意匠の正面図は、特定周波数の電源信号を除去または取得する電子製品(実用品)に関するものであり、美術著作物には該当しません。また、係争製品1及び2は、係争正面図の内容または係争立体物と完全に異なり、実質的な類似が認められません。さらに、係争製品1及び2は、製造者が相当の製造技術を以て初めて完成し得るものであり、係争正面図の単純な再現ではなく、複製の要件にも該当しません。また、係争製品1及び2の立体実物は、いかなる著作権の種類にも該当せず、翻案の可能性も存在しません。加えて、原告は被告が係争正面図や係争立体物に接触した事実を立証できておらず、以上を抗弁の根拠とします。

二、重要な争点
係争意匠の正面図および係争立体物は独創性を有し、著作権法による保護を受けるかどうか?また、係争製品が当該正面図及び係争立体物を侵害しているかどうか?

三、裁判所の見解
1. 係争意匠の図形の様式及び美術著作物について
(1)著作権侵害(盗作)の有無は、「接触」と「実質的類似」の二要件をもとに、すべての関連事情を総合的に考慮して判断すべきです。著作物の実質的類似は、完全に同一または類似である必要はなく、著者の独創性を表現する内容に実質的な類似があれば足ります。したがって、両者の類似の程度が非常に高い場合や、著作物の主要な構成部分に当たる場合、たとえそれが著作物全体のごく一部であっても、実質的類似が認められることになります。そのため、分析・解構の際には、細部の比較だけでなく、著作物の「全体的な観念と印象」にも注意を払うべきです。

(2)係争正面図及び図形著作物について
原告は、係争図形著作物の対象が、被告のオリジナルフィルターの前面金属パターンまたは係争意匠の正面図に平面的に単純に付着しているものであると主張しており、係争図形著作物と係争美術著作物を併せて論じています。

(3)係争正面図は、独創性を有する図形著作物である。

原告は、係争意匠の設計説明を参照することで、係争図形著作物の設計要点が、正面図における中央の四つの矩形金属層と、一つの直線状金属層と、金属パッドとその延長部、との互いの具体的な位置関係や間隔の配置から生じる全体的な観念と印象にあると主張しています。

(例えば:
(1)金属層のパターンと金属パッドの延長部分が生み出す全体的な独特の対称感;
(2)隙間部分と金属層のパターン及び金属パッドの延長部分との間に生じる全体的な独特のコントラスト感;
(3)直線状金属層の大まかな延長長さと四つの矩形金属層との間に生じる全体的な独特の調和感;
(4)中央の四つの矩形金属層、一つの直線状金属層、及び金属パッドの延長部分のシンプルで明確なデザインが生み出す全体的な独特の簡素感)
これらについて、
被告は、係争正面図に現れる金属パターンの形状が、単純な線条や矩形形状などと類似する幾何学的図形の組み合わせに過ぎず、著者の個性や独自性を表現しているとは認めがたいと主張しています。

しかしながら、先行技術のフィルターが示す線条、矩形、L字形などのさまざまな形状や数量の本体、金属層、金属パッド、穿孔、共振孔の各特徴とそれらの相互関係において、その位置配置、材質の表面処理や各構成要素の結合後による全体的な外観などは、多様な表現が可能であり、限られた表現に留まるわけではありません。

ただし、フィルターの各特徴とそれらの相互関係を考慮すると、これらはフィルターにおいて一般的かつ慣用的な要素であるため、係争正面図が独創的で図形著作物として保護される範囲は「四つの矩形金属層の間に隙間があり、最も外側の二つの矩形金属層に隣接するL字形の金属パッドが二つ配置され、これらのL字形金属パッドが下方向に延び、さらにこれらの矩形金属層の上に直線状の金属層が隣接している」という全体的なパターンに限られます。

さらに、係争正面図は既存のフィルター製品の設計図や正面図と比較して、少なからず創造的な構想や表現が盛り込まれており、無思考で任意に配置されたものではなく、単に条件情報をコンピュータに入力することで自動生成されたものでもありません。そのため、係争正面図は独創性を有しているといえます。

(4)独創性を有する係争立体物は、美術著作物として保護される
原告は、係争美術著作物の対象が、原告のオリジナルフィルターの六面金属パターンが直方体のフィルター本体に付着して構成される、美的感覚を有する立体デザインであると主張しています。

係争立体物の正面図及び上面図におけるパターンの構成方法について、金属層の形状や数量、円形孔の配置位置、金属層と金属パッドの形状の対応関係、金属パッドの底部の形状と分布(底面まで延びる)などは、相当な美術的技巧を示しており、創作者の個性や独自性を十分に表現しています。したがって、独創性が認められ、著作権法に基づく美術著作物として保護されるに値します。

2. 著作権侵害の判断 
(1)著作権における「複製」とは、印刷、コピー、録音、録画、写真、筆記またはその他の方法により、直接的または間接的に、永続的または一時的に再製作することを指します(著作権法第3条第1項第5号前段の規定参照)。また「翻案」とは、翻訳、編曲、脚色、映画化またはその他の方法で、原著作物に基づいて新たに創作を行うことを指します(同法第3条第1項第11号)。すなわち、独自の創作がない場合は「複製」となり、原作を基に新たな創意を加えて独自性のある表現を行った場合は「翻案」となります。

(2)係争正面図は独創性を有し、係争製品1及び2の立体物の正面図と比較すると、各構成要素間の空間分布に若干の類似点が見られますが、以下のような相違点が存在します。
       (a)両者の本体正面における「コ」字型金属層の有無の違い;
       (b)両者の本体中央部に配置された矩形金属層の形状及び隙間が異なる;
       (c)複数の矩形金属層の辺縁構造形状及び隣接辺の形状が異なる;
       (d)係争正面図ではL字形金属パッド及びL字形の隙間が形成されているのに対し、係争製品1及び2ではフィンガー状金属パッド及び曲がった隙間が形成されている;
       (e)係争正面図の二つの金属パッドの底部は両側が内側に向かって凹んだ二重アーチで下方に延びている。

これらにより、一般的な理性的な人々から見ても、両者の構図、全体的な外観、主要な特徴、配置などにおいて全体的な観念や印象は異なります。量的及び質的に総合的に観察しても、係争正面図と係争製品1及び2は実質的に類似しておらず、したがって係争正面図の複製権及び翻案権の侵害となっていません。

四、結論
本件において、原告は2024年度民専訴字第52号判決において、自ら創作した係争正面図および製作した係争立体物が、それぞれ著作権法により保護される図形著作物および美術著作物であると主張しました。しかしながら、係争意匠は著作者の独自性を表現し、個人の精神的作用としての美感、芸術的創作または美術的技巧を十分に表現したものとは認められず、したがって著作権法によって保護される図形著作物及び美術著作物には該当しないとされました。

その後、原告の控訴により、2024年度民専上字第2号判決において、係争意匠の正面図および係争立体物は、それぞれ図形著作物および美術著作物であると認定されましたが、係争製品はこれらと実質的に類似しておらず、したがって控訴人の複製権及び翻案権を侵害していないという判断が下されました。

著作権法において保護される著作物とは、著作者が独自の思想や感情を表現した作品を指します。これには、原始的かつ独立した創作(原始性)に加え、一定の高度を有する創作性(独創性)も必要とされます。独創性の判断は、その創作が既存の著作物と「区別できる変化」を持ち、「最低限の創作の高度」を具備していること、すなわち独自性を表現できることによって初めて認められ、著作権が付与されることになります。

本件において、原告は、自らの係争意匠がフィルターに応用されることを認めており、フィルターに関する先行技術においても、フィルター表面に施されたパターンデザインは、使用される通信システムにより異なることを述べています。また、フィルター表面のパターンが適切に設計されていない場合、フィルターの特性にも影響を及ぼすことについても言及しています。したがって、係争意匠において、フィルターの開放面に金属パターン層を設置する技術内容は、フィルター構造全体の結合容量を増加させ、所望の使用周波数帯域を実現することを主な目的としていることが分かる(2024年度民専訴字第52号)。

係争立体物は実用的機能を有しているものの、既存のフィルター製品の設計図や正面図と比較すると、フィルターの正面図及び上面図におけるパターン、金属層の形状や数量、円形孔の配置位置、金属層と金属パッドの形状の対応関係、金属パッドの底部の形状及び分布(底面まで延びる)などにおいて、形状設計や位置配置には造形原理や美的感覚に基づいたデザイン手法が用いられており、少なからず一定の創意が存在し、独創性が認められますので、これは著作権法によって保護される美術著作物に該当すると考えられます。

さらに、原告は、系争製品1及び2が系争正面図及び系争立体物を複製または翻案し、原告の意匠権及び著作権を侵害したと主張していますが、裁判所による比較の結果、系争立体物の創造的表現である「四つの矩形金属層の間に隙間があり、系争意匠と系争製品の最外側の二つの矩形金属層の隣にL字形の金属パッドが二つ配置され、これらのL字形金属パッドが底面に延び、底面の金属層との間に間隔がある。さらにこれらの矩形金属層の上に直線状の金属層が隣接している」部分について、系争製品1及び2とを比較すると、両者の全体的な外観や主要な特徴において全体的な感覚は類似していないとの判断を示しました。

以上のことをまとめると、裁判所は最終的に、係争正面図及び係争立体物はそれぞれ図形著作物および美術著作物に該当し、係争意匠を無効する理由がないと認めたものの、係争製品は、係争正面図及び係争立体物と実質的に類似していないので、控訴人の複製権及び翻案権を侵害していないと判断しました。



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