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BY 編集部
一、 前言
一、 前言
1. 専利法第96条第1項及び第2項の規定によれば、「発明の特許権者は、特許権を侵害する者に対して、その行為の排除を請求することができる。侵害の恐れがある場合、その行為の防止を請求することができる。」や、「発明の特許権者は、故意または過失により特許権を侵害した者に対し、損害賠償を請求することができる。」との規定を有します。特許権者が市場において自らの特許権技術内容と同一の製品が出現したことを発見した場合、その特許権が侵害されるのを防ぐため、警告状を送付したり、侵害行為者に対して直接特許侵害に関する民事訴訟を提起したりすることで、自らの権益を守れます。特許権侵害に関する民事訴訟において、特許権者が最もよく主張する請求権は二つあり、それぞれ侵害排除請求権と損害賠償請求権です。侵害排除請求権は侵害行為者の侵害行為の排除または防止を請求する権利であり、損害賠償請求権は侵害行為者の行為によって生じた特許権者の損害の賠償を請求する権利です。これらはそれぞれ専利法第96条第1項及び第2項の規定に対応しています。
2. 上述の二つの規定の要件を相互に対照すると、特許権者が「侵害排除請求権」を主張する際には、特許権の侵害事実を証明するだけでよく、侵害行為者が主観的に故意または過失を有することを証明する必要はありません。一方、「損害賠償請求権」を主張する場合は、特許権侵害の事実を証明することに加えて、侵害行為者が主観的に故意または過失を持っていることを証明する必要があります。また、特許権者は損害賠償請求権を主張し、侵害行為者が主観的に故意または過失があると裁判所を説得しようとする場合、裁判所はどのように特定・判断するのかについて、以下にて説明します。
2. 上述の二つの規定の要件を相互に対照すると、特許権者が「侵害排除請求権」を主張する際には、特許権の侵害事実を証明するだけでよく、侵害行為者が主観的に故意または過失を有することを証明する必要はありません。一方、「損害賠償請求権」を主張する場合は、特許権侵害の事実を証明することに加えて、侵害行為者が主観的に故意または過失を持っていることを証明する必要があります。また、特許権者は損害賠償請求権を主張し、侵害行為者が主観的に故意または過失があると裁判所を説得しようとする場合、裁判所はどのように特定・判断するのかについて、以下にて説明します。
二、 裁判所の判決実務
1. 製造者の主観的要件の認定-知的財産及び商業裁判所2020年民専上字決第9号
(1) 裁判所はこの案件において、先行判決や裁定の趣旨を引用しています。「特許権侵害事件において、製造者、競争業者、小売業者、または偶然の販売者が、損害の発生を予見または回避するための注意義務の程度は必ずしも同じではなく、個別の事実に基づいて、事業の内容、規模、資本の大きさ、収益状況、営業組織、侵害行為の実際の内容などを考慮して、行為者が注意義務の違反の有無、すなわち損害の発生を予見または回避する過失があるかを判断すべきである」、「特許権は登録及び公告制度を採用しており、誰もがその内容を知ることができる状態にあるため、…一般的なリスク意識を持つ事業者にとっては、製造や販売を行う際に、実施する技術について最低限の特許権の確認を行うべきであり、確認を怠った場合は過失があると見なされる」としています。したがって、侵害行為者が主観的に特許権を侵害する故意または過失があるかどうかについて、裁判所は侵害行為者が損害の発生を予見または回避するための注意義務の程度に基づき、侵害行為者の事業内容などを総合的に判断する必要があるとしています。また、特許権の公告制度に基づき、企業はより高い注意義務を負い、製造・販売を行う際には確認義務を果たすべきであるとされています。
(2) 本件において、控訴人は被控訴人の特許権を侵害する故意や過失はないと主張しましたが、裁判所は控訴人が「自動車及びその部品の製造業」に従事しており、被控訴人の特許と同じ技術分野に関する実用新案を申請したこと、さらに控訴人と被控訴人が競争関係にあることを考慮しました。営業規模などの経営項目を総合的に判断した結果、裁判所は、「控訴人が自社製品が係争特許を侵害することを予見または回避するための注意義務は、単純な小売業者や偶然の販売者に比べて高く負われている」と認定しました。そのため、控訴人は侵害製品の生産、製造、販売に際してより高い確認義務を負っており、控訴人が被控訴人の特許権を侵害する故意や過失がないと抗弁することは認められませんでした。
(2) 本件において、控訴人は被控訴人の特許権を侵害する故意や過失はないと主張しましたが、裁判所は控訴人が「自動車及びその部品の製造業」に従事しており、被控訴人の特許と同じ技術分野に関する実用新案を申請したこと、さらに控訴人と被控訴人が競争関係にあることを考慮しました。営業規模などの経営項目を総合的に判断した結果、裁判所は、「控訴人が自社製品が係争特許を侵害することを予見または回避するための注意義務は、単純な小売業者や偶然の販売者に比べて高く負われている」と認定しました。そのため、控訴人は侵害製品の生産、製造、販売に際してより高い確認義務を負っており、控訴人が被控訴人の特許権を侵害する故意や過失がないと抗弁することは認められませんでした。
2. 代理店の主観的要件の認定-2015年知的財産裁判所民専訴字第80号
本件の被告は、自社の従業員数はわずか10名であるため、「特許調査や関連データベース、競合他社のウェブサイトを閲覧する」との、注意義務を払ったのは、製造や研究開発を行っていない被告会社に負担できないと主張しました。また、市販されている掃除ロボット(侵害商品)は、充電ステーションに戻って充電する装置の操作方式や、行動方式、若しくは多くの技術的詳細が類似しており、被告は代理店に過ぎず、業界の下流に位置しているため、「自社の販売した商品が原告の特許権を侵害しているかどうかを確認することは困難である」と主張しました。しかし、裁判所は被告の営業項目には電気機器の小売業が含まれており、他のモデルの掃除ロボットも販売しているため、掃除ロボットの専門的な販売業者に該当すると判断しました。さらに、原告から係争特許に基づいた掃除ロボットの製造の権利を貰えた第三者が、製造された製品には原告の特許番号が記載されていました。被告は専門販売業者であるため、当然、市場に存在する他の類似製品について研究し、把握していると考えられます。もし被告が適切な注意を払って調査を行っていれば、侵害を回避することができます。故に、被告の行為には明らかに過失があったと認定されます。
三、最近の判決意見と結論-2024年最高裁判所台上字第620号
本件において、被告1は第二審で、自らが単なる小売業者であり、販売していた係争ベルト(侵害品)が、原告の特許権を侵害しているかどうかを知るためには分解する必要があり、また、原告からの警告状を受け取った後には販売を中止し、特許権を侵害する故意や過失はなかったと主張しました。一方、第一審において被告2は、係争ベルトを被告1に販売目的で引き渡した際には原告の特許がまだ公開されておらず、係争ベルトが特許権を侵害していることを知る由もないことから、原告の特許権を侵害する故意も過失もなかったと主張しました。第三審において裁判所は、これらの主張が被告にとって重要な防御手段であると認めたものの、第二審の判決ではこれについて論じられておらず、判決は不当かつ違法であると判断し、本件を知的財産及び商業裁判所に差し戻して再審を命じました。
四、結論
これまで、知的財産及び商業裁判所は特許権侵害行為者に故意または過失があるかどうかを判断する際、研究開発・製造能力を有する製造者は、侵害製品の製造元であることから特許権侵害を回避する設計能力を有するとされ、そのため、侵害行為が発生した場合に、当然のことながら、注意義務や確認義務を怠り、故意・過失があったと認定される可能性が高いです。また、製品販売のみを行う代理店についても、取り扱い製品の、販売期間の長さや経験、種類などに応じて製品の技術を見分ける専門能力を有するので、注意義務や確認義務を負っていると認定される可能性があります。しかし、最近の最高裁判所の判決では、被告1および被告2が特許権侵害の故意や過失がないとする抗弁は重要な防御方法でありながら、原審では論じられていないと指摘されました。特に被告1は、製品を被告2に販売目的で引き渡した際に原告の特許がまだ公開されておらず、被告2が小売業者であると主張しました。且つ、特許が未公開の場合、誰もが関連特許の存在を確認・検索することが困難であり、このような状況下で侵害者に損害賠償責任を負わせることが過酷ではないかという点について、原審裁判所は考慮していなかったことが明らかになりました。本件は最高裁判所により差し戻されたため、今後知的財産及び商業裁判所がこの争点についてどのような見解を示すかが注目されています。
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