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台湾、中国における、コンピュータソフトウェアに関する創作の特許出願の違い

台湾、中国における、コンピュータソフトウェアに関する創作の特許出願の違い

近年、全ての分野における科学及び技術の発展は殆ど、コンピュータソフトウェアの発明の創造、応用、又はその延伸に係り、特に産業用モノのインターネットIOT、5Gネットワーク、AI、ブロックチェーン等の、人類の生活を変革する技術は全て、コンピュータソフトウェアを中心として急速に発展している。

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近年、全ての分野における科学及び技術の発展は殆ど、コンピュータソフトウェアの発明の創造、応用、又はその延伸に係り、特に産業用モノのインターネットIOT、5Gネットワーク、AI、ブロックチェーン等の、人類の生活を変革する技術は全て、コンピュータソフトウェアを中心として急速に発展している。

コンピュータソフトウェアは、プログラムコードの実行に基づいて、論理的な判断を実現することを主体とするものであり、実体がなく且つ抽象的な性質を有するため、特許出願においてはその特殊性を有する。各国は、コンピュータソフトウェアの創作に関する基準を制定しているが、一致するものではない。本文では、台湾及び中国における、コンピュータソフトウェアに関する創作の法規について比較すると共に、コンピュータソフトウェアに関する特許出願において注意すべき要点を纏めた。

一、台湾の規定

台湾専利法第21条では、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作を指す」と規定されており、審査基準第二篇第十二章においては、「特許出願の発明において、コンピュータソフトウェアを必要とするものは、コンピュータソフトウェアに関する発明という」との定義を有する。コンピュータでコンピュータソフトウェアを実行する時、プログラムとコンピュータとの間の電圧や電流の変化等の一般的な物理現象を超える場合、そのコンピュータソフトウェアは技術効果を有すると言い、一方、コンピュータソフトウェアに関する創作は、その標的が方法の請求項であるのか物の請求項であるのかについて明確に定義する必要がある。

請求項の標的について、台湾審査基準には、「請求項が発明の定義を満たすか否かは、その標的の名称に基づいて直接に判断するのではなく、明細書全体から、その創作が、自然法則を利用した技術的思想の創作であるか否かについて判断すべきである」との規定を有する。例えば、請求項の標的の名称により、その発明が物の発明であるのか方法の発明であるのかについて判断できない場合、又は標的がデータフォーマット、パケット等の技術効果を奏しないものである場合には、明細書の記載内容に基づいて、それらの標的は、アルゴリズム等との相互作用による技術性を生じるか否かを判断すべきであり、生じる場合、請求項は不明確であるか、或いは標的の名称と特許出願の発明の実質的な内容と一致していないことになるので、出願人に請求項又は標的の名称の補正を求めるべきである。

また、標的の名称が発明特許の規定を満たしていたとしても、それだけでは、その特許出願の請求項が、発明の定義を満たしているとは言えない。つまり、下記の態様に属するコンピュータソフトウェアの創作は依然として発明の定義を満たしていない。

1. 自然法則を利用していないもので、単なるプログラミング言語、及びビジネス方法等を含む。前記の二つは何れも、人為的な取り決め、又は社会、経済、経験法則である。ビジネス方法として、コンピュータソフト(ハード)ウェアによりビジネス方法を実施する請求項が発明の定義を満たすか否かについては、その請求項に技術性を有するか否か、即ち、その請求項の発明が、コンピュータの簡単な利用のみであり、技術的思想を有しないものであるか否かを更に判断する必要がある。

2. 技術的思想を有しないもの。単なる情報の開示を含み、例えば、単なるユーザーインターフェースの設計又は単なるデータフォーマット、及びコンピュータの簡単な利用、即ち、単にコンピュータで人力作業に取って代わることにより、スピード、処理量、又は正確率を向上させる等のコンピュータの固有能力を奏するものは何れも、技術的思想を有しないものである。ただし、発明全体が技術上の困難を克服し、その分野において一般的なコンピュータの固有の能力ではない特別な効果を奏する場合、その発明の全体は技術性を有するので、発明の定義を満たしていることになる。

ここで特筆すべきことは、特殊な演算法により、本来人間にしかできない知的活動に取って代わる発明は、技術性を有するものであると認められることである。

また、専利法第104条には、「実用新案とは、自然法則を利用した技術的思想のうち、物品の形状、構造又は組み合わせに係る創作を指す」との規定を有し、審査基準第四篇第一章には、「実用新案の主体部分における技術特徴には、構造的特徴を記載する必要があり、且つ1つの構造的特徴を有すれば、物品の形状、構造又は組み合わせとの実用新案の定義を満たすことになる。その内、請求の標的が、ソフトウェアとハードウェア資源との協働に関するものである場合、請求項に物品が記載され、且つその形状、構造又は組み合わせ、例えば、各ソフト(ハード)ウェアモジュール同士の連結関係及び作動方式が記述されていれば、単なるコンピュータソフトウェアの創作ではなく、物品の形状、構造又は組み合わせとの実用新案の定義を満たす創作である」ことが示されている。

二、中国の規定について

中国専利法第2条には、「発明とは、製品、方法又はその改良に対して行われる新たな技術方案を指す。実用新案とは、製品の形状、構造又はその組み合わせに対して行われる実用に適した新たな技術方案を指す」ことが規定されている。

中国において、コンピュータソフトウェアに関する発明は、コンピュータプログラムに関する発明と称され、専利審査指南第二部分第九章において、「発明に記載した課題を解決するために、コンピュータプログラムの処理フローが全部又は一部の基礎となっており、コンピュータが前記フローに沿って作成されるプログラムを実行することにより、コンピュータ外部又は内部の対象を制御や処理する解決方案である」と定義されている。

審査については、専利審査指南において、「審査は、請求項に限定される解決方案に対して行わなければならない」と規定されている。また、コンピュータプログラムに関する発明が専利法第2条における発明の定義を満たすか否かについて、及び第25条第1項第2号に規定されている知的活動の規則や方法に該当するか否かについては、審査指南において、以下のような判断基準が示されている。

1. 請求項に係る発明が、計算方法或いは数学の計算規則のみであり、若しくは媒体のみに記憶されるコンピュータプログラム自身、又はゲームの規則や方法に関するものである場合、その発明は、知的活動の規則や方法に該当するものである。ただし、他の技術特徴を更に含む場合、請求項は、全体として知的活動の規則や方法ではないので、特許権を取得する可能性を排除してはならない。

2. 請求項の目的が、技術課題の解決ではない場合、若しくは、コンピュータプログラムをコンピュータで実行して、コンピュータ外部又は内部の対象を制御、又は処理する際に、自然法則を利用した技術手段が反映されていないか、或いは自然法則に規制されない効果を獲得するものである場合、その請求項は、専利法第2条における発明の技術方案を満たしていなく、一方、請求項が、技術課題を解決し、且つ自然法則の技術手段を利用することにより自然法則に規制される効果を獲得するものである場合には、専利法第2条における発明の技術方案を満たしている。

専利審査指南には、「方法の請求項の記載方式においては、コンピュータプログラムが実行する各機能が、どの部分で如何にして果たされるかについて記述しなければならなく、一方、製品(物)の請求項の記載方式について、製品の各構成部分は、コンピュータプログラムが実行する各部分又は方法のステップと対応して一致しなければならなく、コンピュータプログラムを実現するために構築しなければならない機能モジュールであると理解すべきであり、その請求項は、ハードウェアの方式により実現する実体装置と理解すべきではない」ことが示されている。

専利審査指南第一部分第二章の6.1には、「実用新案は、産業の方法で製造され、確定された形状、構造を有し、一定の空間を占める実体のみを保護し、方法、例えば、コンピュータプログラムは、実用新案による保護の客体に該当しなく、更に、請求項には、形状、構造の特徴のみならず、コンピュータープログラムで限定される技術特徴を含む場合、その請求項は依然として、実用新案による保護の客体に該当しない」ことが示されている。

三、結論

台湾審査基準及び中国審査指南の何れにおいても、「人間の知的活動、例えば、単なるプログラム自身、ゲーム又はビジネスの規則、方法等の自然法則、規律を利用していない創作は、発明特許による保護の客体に該当しない」ことが示されている。技術効果については、台湾審査基準において、「技術上の困難を克服したもの、又は特定の分野において特別な技術効果を奏するものは、発明の定義を満たしている」ことが示されていることから、係るコンピュータソフトウェアに関する発明は、コンピュータの簡単な利用で人力作業に取って代わるものであると、審査官に認定された場合、その特許出願を発明の定義に該当させるために、「その技術方案により、そのソフトウェアプログラムを実行するコンピュータは、コンピュータの一般的な固有の機能よりも多くの効果を発揮する」ことを説明するとよい。

中国専利審査指南には、「コンピュータプログラムに関する発明は、自然法則の技術手段を利用することにより、自然法則に規制される効果を獲得するものでなければならない」ことが更に規定されていることから、「係るコンピュータプログラムに関する発明は、発明の定義に該当しない」と、審査官に認定された場合、その特許出願を発明の定義に該当させるために、「その技術方案では、自然法則を満たす技術手段を採用することにより、コンピュータ内部又は外部に対して自然法則を満たす改良又は効果を齎す」ことについて説明しなければならない。また、審査指南には、「審査は、請求項で限定された解決方案に対して行わなければならない」ことが示されているので、その規定に関する審査意見を克服する可能性をより一層高めるために、出願人は、「解決方案を発明の定義に該当させる技術特徴として請求項を更に限定する」ことを考慮すべきである。

特許出願の種類について、台湾審査基準には、「単なるコンピュータソフトウェアの創作は、実用新案による保護の標的に該当しないが、請求項に特定されている主体部分に構造的特徴を有する場合は、実用新案の定義を満たす」ことが示されている。故に、コンピュータソフトウェアに関する発明は、その各機能がモジュール化され、且つ各ソフト(ハード)ウェアモジュールの協働の関係が明確に特定されれば、物品の形状、構造又は組み合わせであると認定されることから、実用新案の創作の定義を満たすこととなる。

中国審査指南には、「実用新案の権利の客体としては、一定の形状、構造を有する実体のみを含み、、請求項に形状、構造のみならず、コンピュータプログラム等の方法の技術特徴を含む場合、その発明は、実用新案による保護の客体として認められない。それに対応して、モジュール化された特徴により、コンピュータプログラムが実行する各部分を特定する場合、例えば、識別モジュール、処理モジュール等は、ハードウェア実体装置ではなく、コンピュータプログラムを実現するために構築しなければならない機能モジュールであると認定される」ことが示されている。故に、発明又は創作における全体の技術方案にコンピュータプログラムの技術特徴が含まれている場合、たとえその技術手段を具体的なモジュールで記述したとしても、請求項は、実用新案により保護される形状、構造的特徴であると認定される可能性は低く、実用新案の定義を満たしていないと認定される虞がある。

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。 

 
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