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一、前書き
出願人が発明を完成させた後、早期に出願日を取得するために、出願時に提出された請求項の内容は、完成された発明を十分に保護できない可能性がある。出願人は、出願過程における補正可能な期間において請求項を補正することにより、発明の十分な保護を図ることができるが、特許査定通知を受けた後では、請求項を補正しようとしても適用できる規定がないため、特許査定書の送付後から3ヶ月以内に分割出願(専利法第34条第2項)を提出することにより、追加したい請求項を当該分割出願に記載するしかない。
前記分割出願については、出願人より自発的に提出されるほか、審査段階において審査官が分割出願を求める通知を発することもある。また、出願に対する実体審査請求が提出された後、審査官は特許請求の範囲に対して審査を行う。
二、分割出願の提出時点
出願人が分割出願を行おうとする場合、(1)原出願の再審査の査定前、又は(2)原出願の特許査定書、再審査の特許査定書の送達日から3ヶ月以内に提出しなければならなく、即ち、分割出願は、原出願が知的財産局に係属している間、更に、初審査又は再審査の特許査定書の送達後3ヶ月以内であれば、提出することができる。但し、原出願が初審査段階で拒絶された場合、当該出願は知的財産局に係属されないことになるので、このような場合には、そのまま分割出願を提出してはならず、一旦再審査を請求して当該出願を知的財産局に係属させなければ、分割出願を提出することはできない。
出願人より提出された分割出願は、原出願の出願日を出願日とし、また、原出願において優先権が主張されている場合、分割出願においても、優先権を主張することができるが、分割出願は、原出願の出願日を援用して出願日とする利益を享受することができるので、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲、又は図面に開示された範囲を超えてはならない。なお、原出願が新規性、進歩性喪失の例外規定の適用を受けたものであれば、分割出願においても、その例外規定の適用を受けることができる。
また、分割出願の申請においては、原出願の形式を変更してはならず、例えば、原出願が特許であって、実用新案として分割出願を行おうとした場合、先に特許として分割出願を行ってから、当該特許出願を実用新案出願に変更すべきである。
更に、分割出願の実体審査の請求について、例えば、当該分割出願が特許出願である場合、出願人は原出願の出願日から3年以内に実体審査を請求しなければならず、また、分割出願の提出時に既に原出願の出願日から3年を超えた場合には、分割出願を行った日から30日以内に実体審査を請求しなければならない。
三、どのような場合に分割出願を行うのか
出願人は、審査意見通知書の審査意見に対応するために、分割出願をすることができ、また、ビジネス上の都合(出願人自身の製品、又はライバルの製品)により、分割出願を提出することもできる。その他に、次の場合にも分割出願を行うことができる。
1.審査意見において「単一性の規定を満たさない」と指摘された場合
出願における2以上の発明が1つの広義の発明概念に属する場合、単一性の規定を満たすので、1出願において提出することができる。複数の独立請求項を含む特許請求の範囲に対し審査をする場合、審査官は、これらの独立請求項から特別な技術的特徴を選択する。その特別な技術的特徴とは、出願に係わる発明全体が先行技術に対する貢献をもたらすものであり、即ち、特別な技術的特徴とは、請求項に新規性及び進歩性を付与するものである。
仮に審査官から発せられた審査意見において、「先行技術と対比した結果、各請求項間には対応する特別な技術的特徴を有しないので、単一性の規定を満たしていない」と指摘されたとしても、各独立項が先行技術に対して進歩性を有するものである場合は、単一性の規定を満たしていない独立項グループを分割出願とすることにより、独立項の範囲を減縮することなく、最も広い特許請求の範囲を確保することができる。一方、審査官から発せられた審査意見において、「先行技術と対比した結果、各請求項間には対応する特別な技術的特徴を有しないので、単一性の規定を満たさず、且つ各独立項はいずれも、先行技術に対して進歩性を有しない」と指摘された場合、出願人は、まず進歩性欠如の問題を克服してから、単一性欠如問題の解決に当たる。
2.審査意見への対応について2の補正方法を有する場合
進歩性問題に関する審査意見を受けた後、出願人は、複数の補正方法(特に範囲を減縮するもの)、例えば、2つの同等で重要な補正方法を考えた場合、単一の審査意見に対しては、そのうちの1つの補正方法により補正を行うことしかできなく、他の補正方法によるものについては同時に提出できないので、このような場合、出願人は、分割出願をすることにより、他の補正方法による請求項を提出することができる。
3.早期に特許査定可能な請求項の査定を求める場合
審査意見において「一部の請求項が拒絶理由を有し、他の請求項が拒絶理由を有しない」ことが示された場合、出願人は、特許査定可能な請求項を原出願に残し、拒絶理由を有する請求項を分割出願とすることにより、その分割出願において答弁及び/又は補正を行うことができる。これにより、原出願における特許査定可能な請求項が早期に認められることを確保できる。
4.原出願において主張されなかった発明を主張する場合
出願人は出願後に新たに請求項を追加しようとする場合があるので、審査意見通知書の発行前、又は審査意見通知書を受け取った後の意見書提出可能期間内に、その新たな請求項に係る発明が明細書及び図面に開示されていれば、その新たな請求項を特許請求の範囲に追加することができる。但し、特許査定書を既に受け取った場合、分割出願は、特許査定書の送達後3ヶ月以内にしかできない。なお、明細書に開示された発明が前記の状況に従って出願されず特許査定とならなかった場合、請求項において主張されていないこれらの発明は、出願人により開示され且つ公開された一般大衆に貢献するものになり、出願人が工夫を凝らして得た発明は無償で一般大衆に利用されることになる。
5.ペンディング中の出願における請求の範囲を調整することにより、出願人の新規製品をカバーする場合
特許の審査手続きは数年かかることがあり、特に、出願後の審査請求可能な3年の期限がぎりぎりになって審査請求が提出された場合、保護を得ようとする請求の範囲が変更される可能性があり、特に数年を経たので、新規発売する製品が出願時の製品と異なる可能性があることから、当該出願がまだ査定されていないが、補正可能な期間内ではない場合、出願人は、分割出願により新規製品の保護を求めることができる。
6.分割で出願状態を継続させ、請求項の範囲を変更することにより、競合社の製品をカバーする場合
審査中又は特許査定された請求の範囲は、競合社の製品をカバーできない場合があるが、分割出願は、その親出願の出願日を援用して出願日とするので、親出願から分割出願をした後、更にその分割出願から別の分割出願をしておけば、親出願及び最初の分割出願が特許査定され且つ分割出願を提出できない時期にあったとしても、第2(又は第3)の分割出願が更に分割出願をすることが可能な状態にあるので、いつでも競合社の製品をカバーする請求項を有する分割出願を行うことができる。また、最後の分割出願が親出願の出願日をもつことは、親出願の存続期間を延長させることに等しいので、親出願が既に特許査定され且つ親出願から分割出願をすることができない場合であっても、出願人は依然として、競合社の製品を監視しながら、分割出願で請求項の内容を変更することにより、当該製品をカバーすることができる。このような措置は、競合社の出願人と同一の技術分野に進出することを効果的に防止できる。
7.分割で出願の状態を継続させ、且つ請求項の範囲を変更することにより、競合社の出願の請求の範囲をカバーする場合
競合社の出願の請求の範囲をカバーできる請求項を得たい場合、出願人は、競合社の公開された請求項及びその後の補正を監視することにより、競合社が保護をしようとする請求の範囲を十分に把握すべきである。そして、出願人は、原出願又は分割出願の請求項を補正することにより、競合社の出願の請求の範囲をカバーできる。こうすれば、後続の訴訟においてかなり有利とある。但し、このようなことは、請求項を補正できる状態にある少なくとも1つの分割出願を常に確保しなければ達成できない。
四、結論
分割出願は、単一性の審査意見に対応する場合に提出できるだけではなく、出願人自身又は競合社の製品/請求の範囲に応じて提出することもできる。分割出願をすることにより、親出願の存続期間を延長させることができるので、分割出願の戦略的活用は、パテントポートフォリオの構築には非常に役立つものである。
※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。