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BY 唐韻如
物の発明は優先的に成分又は構造により限定されるが、成分又は構造により限定できない場合、特性、機能、製法、用途等により限定することができる。特性により物を限定することについて、発明専利審査基準第二篇第十四章の5.1には、「天然物から分離されたタンパク質が配列で特定できない場合は、当該タンパク質の機能、物理、化学的特性、製法等で特定することができる」との説明が例示され、また、発明専利審査基準第二篇第十五章の5.1.1には、「漢方薬の抽出物は通常複数の成分を含み、請求する抽出物を化学名稱、分子式又は構造式等で明確に限定することが難しい場合、製法の他、物理、化学性質でこのような複数の成分を有する漢方薬の抽出物を限定することができる」ことが記載されている。前述の二つの例からも分かるように、出願時に有限の分離抽出技術、分析、試験方法により発明の成分、化学構造又は分子構造を的確に鑑定又は識別することができなく、成分又は構造により物の発明を限定することが難しい場合、代わりに物理、化学特性で限定することができる。このことは、特にタンパク質、抽出物、重合物、織物等に関わる発明においてよく見られる。
物の発明の限定に用いられる特性とは、例えば、分子量、融点、pH、弾性率、導電率、屈折率、密度、結晶度、酸価、スペクトルなどである。発明専利審査基準第二篇第一章の2.4.1.6と2.5.1によると、特性により物の発明を限定する場合に、該特性はその発明の属する技術分野において常用され、且つ明確な方法であることが必要であり、また、特性により限定する発明は通常パラメータで表されるため、該パラメータの測定方法もその発明の属する技術分野において常用され、且つ明確な方法であることが必要である。さらに、該特性を新しいパラメータで表さなければならない時は、新しいパラメータが公知でないパラメータであるため、明細書に新しいパラメータを測定する方法が記載されていない、又は記載された装置で新しいパラメータを測定できない場合は、特許出願に係る発明を先行技術と比較することができないことから、該請求項は不明確であると認定すべきである。即ち、特性又はパラメータにより限定される物の発明に対し、特許請求の範囲における特性又はパラメータは、該発明の属する技術分野において常用され、且つ明確な特性又はパラメータである必要があり、そうでない場合には、少なくとも明細書においてその特性、パラメータの測定方法、又は測定装置を記載すべきであり、これにより、特許請求の範囲における特性又はパラメータにより限定された物が、先行技術と比較することができ、明確性の要求を満たすことができる。
前述したように、「明細書において該特性又はパラメータ測定方法又は測定装置を記載すべきである」ことは、単に明確性に関するものだけではなく、それらの記載内容は、「特性又はパラメータにより限定された物は新規の物であり、新規性を備えるか否かの判断」に関するものとなる。測定方法において異なる測定條件にすることで異なる特性又はパラメータの測定結果が得られるとして、明細書において「実質的に特性又はパラメータの測定結果を影響する設定条件」が詳しく記載されていない場合、「特性又はパラメータにより限定された物は新規性を有するか否か」の判断において誤判断又は紛争が生じることにつながる。同様に、測定装置において異なる部材又は仕様を選択することで異なる特性又はパラメータの測定結果が得られるものの、明細書においては「これらの実質的に測定結果を影響する装置に係る説明」が詳しく記載されていない場合、「特性又はパラメータにより限定された物は新規性を有するか否か」の判断において誤判断又は紛争が生じる虞がある。
以上のことに鑑みて、測定方法の開示不全又は明確性に欠けることによる紛争を避けるため、通常「業界において一般的に使われている標準的な測定方法で記載する」ことを優先し、例えば、国際標準化機構 (International Organization for Standardization, ISO)、台湾国家規格(Chinese National Standard, CNS)、日本工業規格(Japanese Industrial Standard, JIS)、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials, ASTM)、ドイツ規格協会(Deutsches Institute fur Normung, DIN)、国際半導体製造装置材料協会(Semiconductor Equipment and Materials International, SEMI)が制定した標準測定方法に基づいた記載をし、更に明細書においてその標準測定方法の番号を明記する。ただし、業界においてまだ一般的に通用する標準測定方法がない場合、明細書の明確性に対する開示要件を確保し、新規性の判断根拠を確保するために、測定方法における各測定条件(例えば、サンプルの製造方法、測定の温度、測定の圧力、測定の試剤等)が実質的に特性又はパラメータの測定結果を影響するかどうかを逐一考慮し、測定方法における測定結果に実質的に影響を及ぼす全ての測定条件を明細書に詳しく開示すべきである。同様に、測定装置の開示不全又は明確性に欠けることを避けるため、通常、一定の構造設計と規格を有する測定装置を優先的に選択し、そのメーカーと型番で使用される測定装置を開示するか、明細書において特性又はパラメータの測定に使用される装置を詳しく記載すべきである。
最後に、新しい特性又は新しいパラメータにより限定された物の特許要件に対する判断による紛争は、よく「特許出願に係る発明は新規の物であるかどうか」、即ち、「新しい特性又は新しいパラメータは既存の物又は既存の製法により製造された物において実質的に存在し、ただ今だ発見又は開示されていないだけである」とのことであり、答申又は無効審判の段階においてこのような判断による紛争が存在する場合、「出願人が出願時の明細書に開示された測定方法又は測定装置により比較試験を行い、『特許出願に係る発明は先行技術と異なっている』ことを確認し、ひいては物の新規性を確立する」ことが重要である。以上のことからも分かるように、「明細書における測定方法又は測定装置の開示内容」は、新しい特性又は新しいパラメータにより限定された物の特許要件の判断においては極めて重要であり、出願人が、このような特許出願を提出する際に特に留意すべきである。
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