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BY 張哲偉
一、前書き:
今年の6月に、台湾知的財産局は「専利法一部の条項の改正案」の二回目の草案を発表し、分割制度を調整すると共に、分割可能な時期を緩和させ、さらに、出願変更制度も改正した。以下、分割と出願変更の改正目的をより理解して頂くため、この度の改正について説明する。
二、分割:
(一)、特許
現行の専利法第34条の規定によると(図1に示す)、分割可能な時期は、「一、原出願の再審査の査定前。二、原出願の初審査許可査定書、再審査許可査定書の送達後三か月以内。」である。原出願が法定要件を満たし許可査定された場合、出願人が「初審査許可査定書」または「再審査許可査定書」を受け取ってから、三か月以内であれば分割出願を提出することができ、つまり、特許証料と第一年年金を納付する前に、出願人は、既に許可された原出願の請求の範囲以外に、明細書に掲載された他の部分に対して、分割出願を行うことにより保護を請求するかを考えることができる。この制度は出願人にとても有利であるが、原出願が拒絶査定を受けた場合、現行制度では出願人に対して逆に不便となる。詳しく述べると、原出願が拒絶査定を受けた後に、請求の範囲に記載されていなく、明細書のみに記載されている部分に対して分割出願を行おうとした場合、その原出願を続行するつもりがなくても、原出願に対して再審査を請求し、知的財産局において、再審査の状態に係属させなければならない。
図1、現行制度で分割可能な時期
このような問題は、将来解決できる。専利法改正案の第二回草案第34条第2項第3号によると、分割時点の制限が緩和され、出願人が原出願の拒絶査定書の送達後二か月以内であれば分割できるようになる。この度の、救済手段の簡略化、再審査制度の廃除並びに拒絶査定覆審制度の導入等の改正を纏めると、分割可能な時期は以下の図2に示すようになる。将来、原出願が拒絶査定を受け、拒絶査定に対して覆審を提出しない場合であっても、出願人は拒絶査定書の送達後二か月内に、分割出願を行うことができる。この場合で提出した分割出願は、原出願の請求の範囲に記載された内容に制限されない。(註:改正案の第二回草案によると、覆審の結果は「決定」(日本の審決に相当)と呼び、図2において、覆審を経て許可された場合を「許可決定」と呼び、拒絶された場合を「拒絶決定」と呼ぶことになる。)
図2、専利法改正後の、分割可能な時期
以下、専利法改正後で分割できない時期を示す。
1. 原出願が許可査定書或いは許可決定書を受け取ってから三か月過ぎた場合
2. 原出願が拒絶査定書を受け取ってから二か月過ぎ、且つ覆審の請求をしなかった場合
3. 原出願が拒絶査定覆審の審議を経て、拒絶決定された場合
また、改正案の第二回草案においては、現行の「原出願で既に完成した手続から審査を続行しなければならない」との規定を削除し、将来、拒絶査定に対する覆審の段階で提出した分割出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行するのではなく、初審査から行うこととなる。尚、この場合、分割出願に対して、その後の救済機会がより保障される。
(二)、実用新案
現行の専利法の規定によると、実用新案は再審査の適用対象ではないことから、出願人が拒絶処分書に不服がある場合、訴願法の規定に従い救済を求めることしかできないので、現行制度では、一旦拒絶処分書を受け取った場合、訴願或いは行政訴訟を利用して原処分を取り消さなければ、分割出願を行うことができない。
改正案の第二回草案においては、第120条第3項が増設され、それにより、実用新案の出願人は、拒絶処分書を受け取ってから一か月以内に、申請書と理由書を提出し、知的財産局に覆審を請求することができると共に、改正案第二回草案第120条第1項には、「実用新案が第34条第2項第3号に拒絶査定後の分割相関規定を準用する」との規定を有し、その分割可能な期間は、改正案第二回草案第120条第2項の規定により一か月あることから、出願人は将来、実用新案の原出願が拒絶処分書を受け取ってから一か月以内に分割出願を提出することができる。さらに、原出願が覆審に入っても、特許に係わる規定を準用して、拒絶決定前または許可決定書の送達後の三か月以内に分割出願を提出することができる。言い換えると、実用新案に対して、将来の分割可能な時期は、現行制度に比べて出願人に有利なものとなる。
(三)、改正案第二回案第130条の改正内容によると、意匠出願の分割可能な時期は、特許出願と同様であるため、ここでは説明を省く。
三、出願変更:
(一)、意匠から特許への出願変更を可能とする
現行専利法第132条では、「特許または実用新案の出願後、意匠への出願変更を行うものは、原出願の出願日を出願変更案の出願日とする」と規定されているが、意匠から特許への出願変更は認められていない。改正案の第二回草案においては、「特許または実用新案の出願後、意匠への出願変更、或いは、意匠の出願後、特許への出願変更を行うものは、原出願の出願日を出願変更案の出願日とする」との規定を追加した。つまり、将来、出願人が意匠を特許へ出願変更したい場合には、上述の規定により出願変更を行うことができる。但し、「出願変更後の出願は、原出願の出願時の明細書、請求の範囲又は図面の開示範囲を超えてはならない。」との規定も有するので、留意する必要がある。
(二)、拒絶査定に対する覆審の段階での出願変更を可能とする
改正案の第二回草案に、専利法第108条第2項第4号、第131条第2項第3号及び第132条第2項第4号に対して、「原出願の覆審決定書の送達後」との出願変更不可の時点を追加した。即ち、将来、意匠の特許への出願変更が可能となると共に、特許、実用新案及び意匠出願は覆審段階において覆審決定書の発行前であれば、他の出願に変更することができる。意匠と関連意匠との間の出願変更も、覆審段階において、その覆審決定書の発行前であれば可能となる。
四、結論:
改正案の第二回草案において、分割と出願変更に関する規定は、いずれも出願人に有利な方向へと改正され、将来、出願が拒絶された場合に、出願人は、分割と出願変更制度をうまく利用することにより、最も理想的な結果ではなくても、一定程度の保護効果を有する権利を取得できるようになる。また、本文を介して、ご覧の読者様が、専利法改正案においての分割と出願変更に対する認識をより一層深めて頂ければ幸甚に存じます。
※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。
参考資料:知的財産局「専利法一部の条項改正草案の対照表 第二回草案」