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編集部
一、 これまでの条文の変遷
一、 これまでの条文の変遷
1. 台湾における専利表示に関する規定の変遷を見ると、専利法が1944年5月4日に制定された当時、同法第73条には、次のように定められていました。
「専利権者は、専利物品又はその包装に専利表示及び専利証書番号を付さなければならず、実施権者に対してもこれを求めることができる。当該表示が付されていなかったため、第三者が専利品であることを知らずにその専利権を侵害した場合、専利権者は損害賠償を請求することができない。」
その後、当該規定による専利権者の保護は必ずしも十分ではないとの立法者の認識から、1997年の法改正においてただし書が追加されました。その後、2003年1月3日の全文改正に伴う条文番号の変更により、同規定は第79条として以下のように規定されることとなりました。
「特許権者は、特許物品又はその包装に特許証書番号を表示しなければならず、実施許諾を受けた者又は強制実施権者に対しても、これを行うよう求めることができる。当該表示を付していない場合、特許権者は損害賠償を請求することができない。ただし、侵害者が当該物品を特許物品であると知っていた場合、又は特許物品であることを知ることができたと認めるに足りる事実がある場合は、この限りでない。」
上記規定は、実用新案及び意匠にも準用されています。詳細な沿革については、台湾高等法院台南分院91年度重訴字第9号民事判決をご参照ください。なお、同事件において、専利権者は、専利物品又はその包装に専利証書番号を表示していなかったため、1994年1月21日に公布された旧専利法の規定に基づき、裁判所により、第三者に対して損害賠償を請求することはできないと判断されました。
2. しかし、上記規定の適用において見解の相違が生じていたことに鑑み、2011年11月29日に改正された専利法では、同規定を第98条に移し、条文の内容を次のとおり改正しました。
「専利物には専利証書番号を表示しなければならない。専利物に表示することができない場合には、ラベル、包装、又は他人に認識させるに足りるその他の顕著な方法により表示することができる。表示を付していない場合に損害賠償を請求するときは、侵害者が当該物品を専利物であると知っていたこと、又は知ることができることを証明しなければならない。」
立法者は、改正理由において、専利証書番号を表示する行為は、専利権者が専利権侵害に基づく損害賠償を請求するための前提要件又は特別要件ではないことを明確に示しています。
もっとも、専利権者が専利証書番号を表示していなかった場合には、専利権者は、侵害者が当該物品が専利物であると知っていたこと、又は知ることができることを証明する必要があり、その場合に限り、損害賠償を請求することができるとされています。この点については、知的財産及び商業法院111年度民専上易字第3号民事判決の判旨も参照されます。
3. 専利法第98条に定める上記内容について、知的財産法院は、107年度民専訴字第10号事件において、さらに次のように判示しています。
すなわち、専利法第98条の趣旨は、立証責任の分配を定める点にあります。専利権者が専利証書番号を表示していない場合には、侵害者が、当該物が専利物であることを知っていたか、又は知ることができるかが、各事件における審理上の重点となります。
もっとも、侵害者が最終消費者ではなく、事業活動に従事する者である場合には、その者には通常、他人の権利を侵害しないよう積極的に調査・確認すべき義務が、より高い水準で求められると考えられます。そのため、このような場合、侵害者が当該物を専利物であると知り得たとの事実について、専利権者に求められる立証の程度は緩和され得るものと考えられます。
上記の見解は、実務上、注目に値するものといえます。
「専利権者は、専利物品又はその包装に専利表示及び専利証書番号を付さなければならず、実施権者に対してもこれを求めることができる。当該表示が付されていなかったため、第三者が専利品であることを知らずにその専利権を侵害した場合、専利権者は損害賠償を請求することができない。」
その後、当該規定による専利権者の保護は必ずしも十分ではないとの立法者の認識から、1997年の法改正においてただし書が追加されました。その後、2003年1月3日の全文改正に伴う条文番号の変更により、同規定は第79条として以下のように規定されることとなりました。
「特許権者は、特許物品又はその包装に特許証書番号を表示しなければならず、実施許諾を受けた者又は強制実施権者に対しても、これを行うよう求めることができる。当該表示を付していない場合、特許権者は損害賠償を請求することができない。ただし、侵害者が当該物品を特許物品であると知っていた場合、又は特許物品であることを知ることができたと認めるに足りる事実がある場合は、この限りでない。」
上記規定は、実用新案及び意匠にも準用されています。詳細な沿革については、台湾高等法院台南分院91年度重訴字第9号民事判決をご参照ください。なお、同事件において、専利権者は、専利物品又はその包装に専利証書番号を表示していなかったため、1994年1月21日に公布された旧専利法の規定に基づき、裁判所により、第三者に対して損害賠償を請求することはできないと判断されました。
2. しかし、上記規定の適用において見解の相違が生じていたことに鑑み、2011年11月29日に改正された専利法では、同規定を第98条に移し、条文の内容を次のとおり改正しました。
「専利物には専利証書番号を表示しなければならない。専利物に表示することができない場合には、ラベル、包装、又は他人に認識させるに足りるその他の顕著な方法により表示することができる。表示を付していない場合に損害賠償を請求するときは、侵害者が当該物品を専利物であると知っていたこと、又は知ることができることを証明しなければならない。」
立法者は、改正理由において、専利証書番号を表示する行為は、専利権者が専利権侵害に基づく損害賠償を請求するための前提要件又は特別要件ではないことを明確に示しています。
もっとも、専利権者が専利証書番号を表示していなかった場合には、専利権者は、侵害者が当該物品が専利物であると知っていたこと、又は知ることができることを証明する必要があり、その場合に限り、損害賠償を請求することができるとされています。この点については、知的財産及び商業法院111年度民専上易字第3号民事判決の判旨も参照されます。
3. 専利法第98条に定める上記内容について、知的財産法院は、107年度民専訴字第10号事件において、さらに次のように判示しています。
すなわち、専利法第98条の趣旨は、立証責任の分配を定める点にあります。専利権者が専利証書番号を表示していない場合には、侵害者が、当該物が専利物であることを知っていたか、又は知ることができるかが、各事件における審理上の重点となります。
もっとも、侵害者が最終消費者ではなく、事業活動に従事する者である場合には、その者には通常、他人の権利を侵害しないよう積極的に調査・確認すべき義務が、より高い水準で求められると考えられます。そのため、このような場合、侵害者が当該物を専利物であると知り得たとの事実について、専利権者に求められる立証の程度は緩和され得るものと考えられます。
上記の見解は、実務上、注目に値するものといえます。
二、 専利証書番号の表示に関する近時の裁判例
1. 知的財産法院109年度民専訴字第10号事件において、裁判所は、被告の行為は専利権侵害に該当しないと判断したうえで、さらに次のように述べています。
すなわち、被告は、資本金額の規模が小さい、合鍵作製及び印章彫刻を営む店舗でした。専利権者は、専利物に専利証書番号を表示しておらず、また、警告書を送付した際にも、実用新案技術報告書を添付しておらず、客観的で信頼性のある侵害対比資料も提示していませんでした。
さらに、被告が顧客のために合鍵を作製する際、顧客から錠前に関する情報を告げられるか、又は顧客から提供された鍵に専利証書番号が表示されている場合でなければ、被告が、当該鍵に対応する専利権が存在するか否かを知ることは困難でした。
したがって、専利権者が専利物に専利証書番号を表示しておらず、かつ、被告に調査・確認義務違反があったことを証明できない以上、被告に故意又は過失があったと認めることも困難であると判断されました。
2. また、知的財産及び商業法院111年度民専上易字第3号事件では、専利権者は、専利物に専利証書番号を表示していませんでした。一方、侵害者は、自らの事業活動が他人の専利権を侵害していること自体は争わなかったものの、当該侵害行為について故意又は過失はないと主張しました。
これに対し、裁判所は、専利権者が専利証書番号を表示していなかったことから、2019年1月以前については、侵害者に故意又は過失があったとは認められないと判断しました。
もっとも、専利権者は、2019年1月に、侵害者に対し、侵害者が販売している商品が模倣品である旨を告知していました。この時点で、侵害者は、インターネットを通じて、専利権者が販売している製品が専利物であるか否かを確認することが可能であったといえます。そのため、裁判所は、この時点において、侵害者には調査・確認義務違反があり、過失が認められると判断しました。
さらに、2020年4月中旬には、専利権者の配偶者が、侵害者に対し、専利権者が販売している製品は専利物であることを明確に伝えていました。それにもかかわらず、侵害者はこれを無視し、その後も、侵害に該当することを知りながら、従前どおり侵害品の販売を継続していました。したがって、裁判所は、侵害者には故意があったと判断しました。
以上から、侵害者が、自己には故意又は過失がまったくなく、損害賠償責任を負わないと主張したことについて、裁判所はこれを採用することができないと判断しました。
すなわち、被告は、資本金額の規模が小さい、合鍵作製及び印章彫刻を営む店舗でした。専利権者は、専利物に専利証書番号を表示しておらず、また、警告書を送付した際にも、実用新案技術報告書を添付しておらず、客観的で信頼性のある侵害対比資料も提示していませんでした。
さらに、被告が顧客のために合鍵を作製する際、顧客から錠前に関する情報を告げられるか、又は顧客から提供された鍵に専利証書番号が表示されている場合でなければ、被告が、当該鍵に対応する専利権が存在するか否かを知ることは困難でした。
したがって、専利権者が専利物に専利証書番号を表示しておらず、かつ、被告に調査・確認義務違反があったことを証明できない以上、被告に故意又は過失があったと認めることも困難であると判断されました。
2. また、知的財産及び商業法院111年度民専上易字第3号事件では、専利権者は、専利物に専利証書番号を表示していませんでした。一方、侵害者は、自らの事業活動が他人の専利権を侵害していること自体は争わなかったものの、当該侵害行為について故意又は過失はないと主張しました。
これに対し、裁判所は、専利権者が専利証書番号を表示していなかったことから、2019年1月以前については、侵害者に故意又は過失があったとは認められないと判断しました。
もっとも、専利権者は、2019年1月に、侵害者に対し、侵害者が販売している商品が模倣品である旨を告知していました。この時点で、侵害者は、インターネットを通じて、専利権者が販売している製品が専利物であるか否かを確認することが可能であったといえます。そのため、裁判所は、この時点において、侵害者には調査・確認義務違反があり、過失が認められると判断しました。
さらに、2020年4月中旬には、専利権者の配偶者が、侵害者に対し、専利権者が販売している製品は専利物であることを明確に伝えていました。それにもかかわらず、侵害者はこれを無視し、その後も、侵害に該当することを知りながら、従前どおり侵害品の販売を継続していました。したがって、裁判所は、侵害者には故意があったと判断しました。
以上から、侵害者が、自己には故意又は過失がまったくなく、損害賠償責任を負わないと主張したことについて、裁判所はこれを採用することができないと判断しました。
三、 おわりに
以上に述べた法改正の沿革及び関連する実務上の見解を踏まえると、現行専利法における専利証書番号の表示に関する規定は、侵害者に故意又は過失があったか否かという要証事実について、訴訟上の立証責任をどのように分配するかを定めたものとして位置付けられます。
専利権者が、製品上又は他人に認識させるに足りるその他の顕著な方法により専利証書番号を表示することができる場合には、一定の宣伝効果が期待できるだけでなく、訴訟における立証上の困難を軽減することにもつながると考えられます。
参考裁判例:
1.台湾高等法院台南分院91年度重訴字第9号民事判決
2.知的財産法院107年度民専訴字第10号民事判決
3.知的財産法院109年度民専訴字第10号民事判決
4.知的財産及び商業法院111年度民専上易字第3号民事判決
※本記事に関してご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。