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BY 編集部
一、はじめに
工業デザインの分野において、製品外観の意匠は極めて重要な役割を果たしています。意匠は発明や実用新案と異なり、保護の対象は製品の「外観デザイン」、すなわち形状、模様、色彩、またはこれらの結合によって生じる視覚的効果であるとされています。外観デザインは製品の全体または一部に関連する場合が多いため、出願時には出願人が保護を求める範囲を明確に特定する必要があります。
意匠図面の作成規範においては、保護を主張する部分(意匠登録を受けようとする部分)を実線で示し、保護を主張しない部分(その他の部分)を破線で示すことが一般的です。破線を正しく用いることで、出願人は意匠権を明確に限定することができ、後の紛争を回避できるほか、審査官も当該意匠の創作的特徴を迅速に理解する助けになります。反対に、破線の使用方法を誤ると、権利範囲の不明確さを招き、意匠の登録や効力に影響を与える可能性があります。そのため、破線の表示方法を把握することは、意匠出願人や代理人にとって極めて重要な専門知識であるといえます。
本文では、破線使用の目的、基本的な表示方法、よくある誤りおよび注意点など、意匠における非主張部分の破線処理のポイントを詳しく解説します。
二、破線使用の目的
1.保護範囲の限定
意匠の保護範囲は明確でなければなりません。破線を用いることによって、出願人は保護対象としない部分と、保護対象とする部分とを区別できます。例えば、マグカップの意匠出願が取手部分のみに係る場合には、カップ本体部分を破線で描き、保護範囲から除外する必要があります。
2.環境や位置関係の表示
一部のデザインは、特定の製品や構造に配置されて初めて理解可能となります。例えば、コンセントカバー、自動車のドアハンドル、スマートフォンの画面枠などが該当します。このような場合、意匠の対象部分を実線で示し、その周辺環境や結合対象を破線で示します。これにより、審査官がデザインの位置を正しく把握できるとともに、環境の部分が保護範囲に誤って含まれることを防げます。
3.部分意匠保護の柔軟な活用
出願人が製品全体ではなく、その一部のみを保護したい場合があります。例えば、自動車のヘッドランプ、家具の取手、ノートパソコンのヒンジなどは、破線で全体から区切ることで当該部分のデザインのみを独立して主張することができます。これにより、意匠出願戦略上の柔軟性が高まり、創作性のある要素に焦点を当てることが可能になります。
三、破線処理の基本要点
1.実線と破線の明確な区別
原則として、実線は保護を主張する部分、破線は保護を主張しない部分を示します。作図の際は一貫した線の太さや間隔を用い、識別しやすくする必要があります。
2.一貫性の原則
同一の要素は、複数の図面において一貫した表現をしなければなりません。ある部品を一つの図で実線とした場合、他の図でも実線とし、破線と実線を混用してはなりません。混用しますと、保護範囲が不明確になります。
3.部分意匠の正確な表現
部分意匠を主張する場合、保護しない部分はすべて破線で描く必要があります。これにより審査機関や第三者は意匠の範囲を明確に理解できます。例えば、スマートフォンの枠のみについて意匠を主張する場合、画面や本体のその他の部分は破線で示すべきです。
4.環境図の取扱い
環境図は位置関係を示すためのものであり、保護範囲には含まれません。そのため、環境部分は完全に破線で描かれる必要があります。例えば、机上の装飾品を対象とする場合、机について破線で示さなければなりません。
5.混用や不明確な表現の禁止
同一部材の一部を実線、一部を破線で描くことは、権利範囲の不明確を招きます。例えば、同じエッジの一部分を実線、他の部分を破線で描くと、意匠の範囲が不明確とされ、拒絶理由となる可能性があります。このような場合は、鎖線などで区別することが適切です。
四、よくある誤りと注意点
1.破線が不明瞭であること
破線が細すぎたり間隔が狭すぎたりすると、図面を縮小した際に判読困難になる虞があります。標準的な作図規範に従い、図面を1/3に縮小しても明確に識別できるようにする必要があります。たとえば、以下の図1に示すように、破線間隔Aが短すぎると判読性が低下します。
一、はじめに
工業デザインの分野において、製品外観の意匠は極めて重要な役割を果たしています。意匠は発明や実用新案と異なり、保護の対象は製品の「外観デザイン」、すなわち形状、模様、色彩、またはこれらの結合によって生じる視覚的効果であるとされています。外観デザインは製品の全体または一部に関連する場合が多いため、出願時には出願人が保護を求める範囲を明確に特定する必要があります。
意匠図面の作成規範においては、保護を主張する部分(意匠登録を受けようとする部分)を実線で示し、保護を主張しない部分(その他の部分)を破線で示すことが一般的です。破線を正しく用いることで、出願人は意匠権を明確に限定することができ、後の紛争を回避できるほか、審査官も当該意匠の創作的特徴を迅速に理解する助けになります。反対に、破線の使用方法を誤ると、権利範囲の不明確さを招き、意匠の登録や効力に影響を与える可能性があります。そのため、破線の表示方法を把握することは、意匠出願人や代理人にとって極めて重要な専門知識であるといえます。
本文では、破線使用の目的、基本的な表示方法、よくある誤りおよび注意点など、意匠における非主張部分の破線処理のポイントを詳しく解説します。
二、破線使用の目的
1.保護範囲の限定
意匠の保護範囲は明確でなければなりません。破線を用いることによって、出願人は保護対象としない部分と、保護対象とする部分とを区別できます。例えば、マグカップの意匠出願が取手部分のみに係る場合には、カップ本体部分を破線で描き、保護範囲から除外する必要があります。
2.環境や位置関係の表示
一部のデザインは、特定の製品や構造に配置されて初めて理解可能となります。例えば、コンセントカバー、自動車のドアハンドル、スマートフォンの画面枠などが該当します。このような場合、意匠の対象部分を実線で示し、その周辺環境や結合対象を破線で示します。これにより、審査官がデザインの位置を正しく把握できるとともに、環境の部分が保護範囲に誤って含まれることを防げます。
3.部分意匠保護の柔軟な活用
出願人が製品全体ではなく、その一部のみを保護したい場合があります。例えば、自動車のヘッドランプ、家具の取手、ノートパソコンのヒンジなどは、破線で全体から区切ることで当該部分のデザインのみを独立して主張することができます。これにより、意匠出願戦略上の柔軟性が高まり、創作性のある要素に焦点を当てることが可能になります。
三、破線処理の基本要点
1.実線と破線の明確な区別
原則として、実線は保護を主張する部分、破線は保護を主張しない部分を示します。作図の際は一貫した線の太さや間隔を用い、識別しやすくする必要があります。
2.一貫性の原則
同一の要素は、複数の図面において一貫した表現をしなければなりません。ある部品を一つの図で実線とした場合、他の図でも実線とし、破線と実線を混用してはなりません。混用しますと、保護範囲が不明確になります。
3.部分意匠の正確な表現
部分意匠を主張する場合、保護しない部分はすべて破線で描く必要があります。これにより審査機関や第三者は意匠の範囲を明確に理解できます。例えば、スマートフォンの枠のみについて意匠を主張する場合、画面や本体のその他の部分は破線で示すべきです。
4.環境図の取扱い
環境図は位置関係を示すためのものであり、保護範囲には含まれません。そのため、環境部分は完全に破線で描かれる必要があります。例えば、机上の装飾品を対象とする場合、机について破線で示さなければなりません。
5.混用や不明確な表現の禁止
同一部材の一部を実線、一部を破線で描くことは、権利範囲の不明確を招きます。例えば、同じエッジの一部分を実線、他の部分を破線で描くと、意匠の範囲が不明確とされ、拒絶理由となる可能性があります。このような場合は、鎖線などで区別することが適切です。
四、よくある誤りと注意点
1.破線が不明瞭であること
破線が細すぎたり間隔が狭すぎたりすると、図面を縮小した際に判読困難になる虞があります。標準的な作図規範に従い、図面を1/3に縮小しても明確に識別できるようにする必要があります。たとえば、以下の図1に示すように、破線間隔Aが短すぎると判読性が低下します。
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2.破線間隔が狭すぎること
以下の図2のように、二本の平行破線の間隔が1mm未満であり、かつ断線位置がずれている場合、図を縮小すると一本の実線と誤認される可能性があります(いわゆる「疑似実線」現象)。そのため、断線位置はできるだけ揃えるべきです。
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3.図面間の不一致
同一部位を正面図で実線、側面図で破線と描くことは、保護範囲が不明確であると認定されます。
五、結論
意匠の図面は権利範囲を特定するための核心であり、破線はその中で不可欠な表現手段です。破線を活用することで、出願人は保護を主張する部分とその他の部分とを明確に区分でき、過度に広いまたは不明確な保護範囲を避けることができます。まとめますと、破線の表示方法は、「実線と破線の明確な区別」と「各図面間の一貫性」にあります。出願人はこれらの原則を遵守することで、意匠権の範囲を明確かつ確実にすることができます。
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