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中国の特許審査官が職権により、電話にて請求の範囲の減縮を求める場合の対応策

中国の特許審査官が職権により、電話にて請求の範囲の減縮を求める場合の対応策

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BY 編集部

一、前書き

各国の特許審査制度にはそれぞれ、異なるコミュニケーションプロセスが定められており、その特許審査制度は、特許審査機関が特許審査の過程で、直接または特許代理人を介して特許出願人とコミュニケーションを図るためのものであり、審査官とのコミュニケーションにより、審査官が発明や既存技術に対して理解を深めたり、出願書類の問題点について話し合うことで、特許審査の効率や品質の向上を目指しています。

中国の特許審査過程においては、一部の審査官が職権により出願人に、「特許請求の範囲を減縮されたい」との電話連絡をする場合があり、その場合、審査官は、特許請求の範囲に対する補正のアドバイスを与え、出願人は、その補正のアドバイスに同意するかについて検討することができます。

二、実務上の問題

実務上、コミュニケーションの際に審査官は特許請求の範囲に対する補正のアドバイスを与えますが、その補正のアドバイスは、如何様な先行技術を比較の基礎としたのかや、技術的問題を解決するための必要な技術特徴が欠落していると判断した理由を明確に告知することはないことから、出願人は比較すべき先行技術がなく、または理由が把握できない状況となりますので、審査官の補正のアドバイスに同意すべきか否かを判断することが困難となります。以下、同意する場合としない場合の2つの状況についてそれぞれ分析・説明します。

1. 審査官の補正のアドバイスに同意する場合:

出願人が審査官の補正のアドバイスに同意して請求項を補正する場合、審査手続きをスムーズにし、係る費用を節約できる可能性があり、また、迅速に特許査定される可能性もあります。

一方、審査官の職権による電話連絡においては、審査官が検索した先行技術の資料を提供しないことから、出願人が先行技術を確認できなく、「請求項の技術内容について、技術問題を解決するための必要な技術特徴が欠落しているかどうか」との審査官の判断の根拠を把握できない状況で、審査官が提示した補正のアドバイスの合理性を判断することができないことから、軽はずみに請求項の補正に同意してしまうと、請求項が過度に減縮してしまう可能性がありますので、その後の、権利主張が困難になる(下図を参照)だけでなく、将来的に訴訟において請求項の解釈や禁反言に係る問題が生じる可能性もあります。
 

2. 審査官の補正のアドバイスに同意しない場合:

出願人が審査官の補正のアドバイスに同意しない場合、正式な審査意見通知書を受けることになり、その後、意見陳述や補正といった関連手続きが発生しますので、審査期間が延びることになり、また、最終的に特許が許可されないとのリスクもあります。

一方、出願人は審査意見通知書から、審査官の補正のアドバイスの根拠となる先行技術の情報や、請求項の技術内容において、技術問題を解決するための必要な技術特徴が欠如していると判断した理由を知ることができることから、出願人は、審査官が提供した具体的な先行技術の情報と請求項とを比較したり、特許が認められない理由を検討することで、請求項の減縮が妥当であるか否かを判断できるため、請求の範囲の過度な減縮を避けることができ、更に、出願人は意見陳述を行うことで、より適切な権利保護を得ることができます(下図を参照)。
 

三、結論

前述の説明を踏まえますと、審査官から、「請求項を減縮されたい」との、職権による電話連絡を受けた際、出願人は、関連する先行技術の情報や係る理由が示されていないまま、審査官の補正のアドバイスに同意するかどうかを判断するのは、出願人にとって好ましいものではないことから、出願人は審査官に対して「正式な審査意見通知を発行してください」と要求した方が、今後、請求項に関する対応方針の検討を行いやすいと共に、合理的かつより広い請求の範囲を確保することができますので、自身の権利の保護に繋がります。

一方、特許権を早期に取得する必要がある案件について、審査官の補正のアドバイスが受け入れ可能な範囲内であれば、特許権を早めに取得するために、審査官の提案に同意した方がよいかもしれません。ただし、請求項の範囲が過度に減縮されてしまうと、その後の、特許権主張の際に、出願人は不利な影響を受ける可能性がありますので、その点留意する必要があります。

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。

 

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