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BY 編集部
[事件の概要]
原告は、台湾意匠第D199444号「容器」(図1)の意匠権者であり、被告が販売する「盛香珍」とのブランドに係る製品の容器が、係争意匠と極めて類似することが分かったことから、原告は鑑定を依頼して、係争製品(図2)が係争意匠の意匠権の範囲に含まれていることを確認した。その後、原告は二度にわたって、侵害鑑定報告書付きの警告書を被告に送付し、係争意匠に対する侵害行為を停止するよう求めたが、被告は、「その製品は、係争意匠権の侵害とはならない」と返答し、係争製品の販売を続けていることから、原告は、知的財産裁判所に、被告が損害賠償の責任を負うべき、係争意匠に対する侵害行為の差止めを請求した。
[事件の内容]
裁判所において、被告は「食品を筒状の容器に入れて販売することは、係争意匠の出願前に市場においてよく見受けられるものであり、且つ該容器のI形線条、C形線条及び上下並びの楕円形形状も先行意匠に属するものであることから、該係争製品は、原告が所有する係争意匠の権利を侵害していないと共に、原告も、どのような損害を受けているかについて具体的に証明を提出していないので、原告の請求は根拠なく、棄却すべきである。」と主張した。
これに対し、裁判所は、「意匠権権利侵害の判断においては、まず意匠権の範囲を確認し、その確認した係争意匠の範囲と被疑侵害対象(即ち係争製品)との対比を行わなければならない」と指摘した上で、意匠の侵害判断は、「全体的観察、総合的判断」の原則に基づき、係争製品と係争意匠との全体の外観が同一又は類似であるかを確認し、即ち、一般消費者が商品を選択して購入する観点から、係争意匠の図面における全体的な内容と係争製品の前記図面に対応する意匠内容とを観察し、各意匠特徴の異同を考慮することにより行うべきである。上述したように、係争意匠と係争製品とを比較すると、係争意匠における「二つの楕円形形状の滑り止めバンプ」、「立て角の凹部」、「丸みを帯びた矩形形状の部分」(図3)などの多くの相違特徴は、係争製品と明らかに異なることから、両者の外観全体は同一でもなく類似でもないことから、一般消費者に混同を生じさせる虞はないので、係争製品は係争意匠の範囲に含まれなく、係争製品は係争意匠権を侵害していないことが分かる。
従って、裁判所は、「原告の主張や請求には理由がないので、棄却すべきである」との判断を下した。
[補足説明]
台湾の専利侵害判定ガイドラインにおいては、「被疑侵害対象と係争意匠に係る外観とが類似であるか否かを判定する場合、…一般消費者の注意を引きやすい部位又は特徴に重点を置いて、他の意匠の特徴も併せて、被疑侵害対象の全体的外観の統合的な視覚的印象をもって、被疑侵害対象が係争意匠との間で視覚的印象に対する混同を生じさせるか否かを総合的に考慮して判断を行うことができる。…当該部位又は特徴は全体的な視覚的印象に影響を及ぼしやすいため、判断においては、当該部位又は特徴に強い重み付けを与えなければならない」との原則を有することから、前例における係争製品と係争意匠との対比において、「一般消費者の注意を引きやすい」特徴部分において両者は異なっており、混同することはないので、裁判所は、同一や類似のものではないと判断したと考えられる。
図1:係争意匠
図2:係争製品
図3:係争意匠と係争製品との相違特徴
資料の出所:
知的財産局専利主題網、専利民事判決109年度民專訴第37号,2020年12月7日。
<https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-740-883629-941c0-101.html>
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