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知的財産局は、台湾の二重出願制度の重要性及びメリットについて紹介する文章を発表

知的財産局は、台湾の二重出願制度の重要性及びメリットについて紹介する文章を発表

2013年に改正された台湾専利法では二重出願の権利接続制度を導入し、二重出願とは、同一の出願人が同一の発明創作について特許と実用新案を同日に出願するとともに夫々声明した場合、出願人は、発明特許の出願が査定される前に発明特許を選択すれば、特許出願について権利付与を受けることができ、

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BY 編集部

一、前書き

2013年に改正された台湾専利法では二重出願の権利接続制度を導入し、二重出願とは、同一の出願人が同一の発明創作について特許と実用新案を同日に出願するとともに夫々声明した場合、出願人は、発明特許の出願が査定される前に発明特許を選択すれば、特許出願について権利付与を受けることができ、また、対応する実用新案権は特許出願の公告日から消滅されるので、実用新案の早期権利化と特許権による長期的保護の双方のメリットを取り入れた制度である。

なお、台湾においての発明特許出願の審査期間は年々短くなってきており、例えば、発明特許出願の初回審査の平均審査期間について、2013年では41.33ヶ月であるのに対し、2020年では13.9ヶ月へと急速に短縮してきたので、二重出願制度の要否に疑問の声が上がっている。そこで、2022年5月に、知的財産局は、統計とアンケート調査の結果をもとに、発明特許出願の審査期間の短縮による二重出願への影響や、二重出願の重要性及びそのメリットについて、「二重出願の出願傾向と企業の出願戦略」をテーマにした文章を発表した。以下に、その文章の要点を述べる。

二、研究結果の概要

発明特許出願の審査速度の向上に伴い、実用新案登録と発明特許の許可公告との期間が急速に縮まった。例えば、許可された二重出願の案件における「発明公告日」と「実用新案公告日」の平均期間(以下、「権利接続期間」と称す)は、2013年では765日であったが、2020年では217日へと急速に縮まった。即ち、権利接続期間の日数が急速に短縮した。

また、2013年6月13日から2020年12月31日においての、二重出願を申請した発明特許の出願件数は19,822件であり、各年度の二重出願の件数及び権利接続期間の日数の平均値の推移を図1に示す。該図に示すように、各年度の二重出願の出願件数は、権利接続期間の大幅な短縮による影響を受けていないことが分かる。逆に、二重出願の件数は年々増加し、二重出願が齎す、出願人の特許ポートフォリオに対するインセンティブは、「権利の接続」との目的のみに限定されていないことがわかる。





 

国内企業の、二重出願を利用して特許ポートフォリオを行う戦略を検討した結果、以下のような知見が得られた。

1.「権利の接続」は依然として二重出願の主な動機である。

近年、知的財産局は発明特許の審査時間を大幅に改善したことから、発明特許の出願件数が年々着実に増加している。したがって、発明特許の審査の品質は肯定的に評価されていると思われるが、出願人が二重出願を申請する意欲は減っていない。発明特許の公告日と実用新案登録の公告日とは依然として「ある程度の期間」が存在しているので、「権利の接続」は現在もなお、企業が二重出願をする主な動機となっている。

2.二重出願により迅速かつ柔軟に特許ポートフォリオを構築

この二重出願の制度によれば、出願人は、発明特許を取得する前に実用新案登録の形式審査の特性を利用して市場において迅速に特許ポートフォリオを構築して、早期に製品を保護することにより、他者の使用を排除することができる。そして、その後の、知的財産局からの、発明特許に対する実体審査の結果に応じて、実施している実用新案権を適切かつ有効的に訂正することにより、より安定に保護の範囲が得られ、かつ、発明特許の許可前に、企業が当時のビジネス状況に応じて「実用新案登録」又は「発明特許」を選択し、又はその両方を維持することにより、柔軟性をもってに特許ポートフォリオを構築可能となる。

3.発明審査の品質は、ベンチャー産業の競争力の強化に繋がる。

出願人は、実体審査において特許出願を実用新案出願と同一ではない創作に修正するため特許権が実用新案権に接続できなくなるとの原因で、二重出願によるポートフォリオ戦略及び今後二重出願の利用について影響を受けることはない。逆に、出願人にとって、有効かつ比較的安定した発明特許権を取得することは、権利の接続よりも有利である。ベンチャー企業にとって、コストが許される限り、特許権の数量を増加することにより、技術力の表現、及び商業的競争力の強化に有利であるので、特許と実用新案登録が同時に存続する場合、メリットはデメリットを上回ると考えられている。

4.二重出願による「権利の接続」の制度による全体的な影響について

(1)実用新案出願について、企業は、財務管理に影響を与えない前提で、二重出願により、実用新案権の有効性を先に確定し、特許権行使前の準備にもなる。また、実用新案権のみを取得し、その権利範囲を訂正する場合、訂正の目的要件及び時期的要件が課されるので、権利範囲の再調整は容易に行えないのに対して、二重出願によれば、より柔軟な権利範囲の保護を得られるメリットがある。

(2)発明出願について、先に二重出願における実用新案権を取得することにより、発明特許の審査による「ウインドーピリオド」を短縮することができる。発明特許の審査期間において、その実用新案権に対し無効審判が提起された場合、企業は、技術または商業競争に係る潜在的なリスクを事前に把握すると共に、審査中の発明特許の権利範囲を適切に調整することができ、更に、将来取得する発明特許権の品質を向上させることができる。

(3)一般的に、企業は、「製品が既に生産されているか、生産されようとしていること」、「商業的に実行可能であると評価された技術(技術移転や許諾など)」、「予期できる権利行使(例:警告または訴訟)」及び「企業および知的財産権の管理政策のための特許ポートフォリオ」との戦略的ニーズを持ち、創作の内容が実用新案の保護対象に該当する場合、「二重出願」は、特許ポートフォリオ戦略を構築するするときに行える選択肢の一つである。

三、結論

上述のようなの知的財産局の研究報告から分かるように、発明特許権の実用新案権との権利接続期間が大幅に短縮されているが、二重出願は依然として企業の特許ポートフォリオにおける重要な役割を果たすことができる。また、特許と実用新案登録とが同時に存続する場合でも、より柔軟に権利範囲の保護を得られるメリットがある。

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。 

 

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