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一、前書き
意匠とは、視覚に訴える創作、即ち、肉眼で識別・確認可能であり視覚効果(装飾性)を有する創作でなければならないので、物品の形状が全く物品の機能に基づくものであり、視覚的外観を施すことが可能ないかなる創作スペースもない創作である場合、純機能的な物品の形状(日本の「物品の機能を確保するために不可欠な形状」に相当する)と認定され、意匠権を与えるべきではない。
本文は、判決を介して、裁判所の上記純機能的な物品の形状に対する認定について紹介する。
二、事例の紹介
(一)当事者の主張
原告の主張 | 被告の答弁 |
原告は、意匠第D195617号である「オイルパンのドレンプラグの取り外し工具の一部」(係争意匠、図1を参照)の意匠権者である。原告は、被告が係争意匠に類似する製品(係争商品)を販売していることに気づき、被告へ、「直ちに侵害行為を停止すべきである」との旨を通知したが、被告が前記通知の旨に従って処置していないので、原告は、本件の訴訟を提起した。 | それに対して、被告は、「係争商品の外観は係争意匠の図面と完全に同一ではないことから、係争意匠の意匠権の範囲に含まれないと共に、係争意匠は、『純機能的な物品の形状』である」と主張した。 |
(二)主要な争点
証拠1、証拠2、証拠3及び証拠3-1によれば、係争意匠が「純機能的な物品の形状」であることを十分に証明できるか。
(三)裁判所の見解
証拠1、証拠2、証拠3及び証拠3-1は、係争意匠が「純機能的な物品の形状」であることを十分に証明することができない。
A.本件の被告は、「証拠1及び証拠2にはそれぞれ、係争意匠と合わせて使用される止めネジ及びドレンプラグが開示され、証拠3及び証拠3-1にも、対応して使用されるツールが開示されていることから、係争意匠は明らかに、『純機能的な意匠』に属し、意匠登録を受けることができない意匠であるので、…、係争意匠が取り消されるべき理由が存在する」と主張した。
B.しかしながら、係争意匠の明細書を参照すると、係争意匠の取り外しツールは、オイルパンのドレンプラグを取り外すためのものであり、…、且つ係争意匠の図面からその駆動端の中央に「間隔をあけて直線状に分布する二つの凸部」が設けられていることが分かり、それに対して、係争商品もオイルパンのドレンプラグを取り外すためのものであるが、この点について、被告は争いがない。また、係争商品の駆動端の中央には、「一字状の凸部」が設けられていることから、係争意匠の図面及び係争商品の外観から、両者は何れもオイルパンのドレンプラグを取り外すための物であることが分かるが、駆動端の外観設計は同一ではなく、即ち、それらの外観が異なる取り外しツールはいずれも、証拠1のような止めネジ及びドレンプラグを駆動できるものであれば、取り外しツールと、止めネジ及びドレンプラグとの形状を必ずしも完全に対応させる(must-fit)必要はない。
C.更に、取り外しツールには様々な設計があり、原告よりの陳述に基づけば、該取り外しツールは、外観設計において多様性を有し、形状の異なる取り外しツールはいずれも、同一のまたは類似する機能を達成できる。従って、該取り外しツールは、オイルパンのドレンプラグを取り外す機能を有する以外に、その形状や表面の装飾に係る外観が変化可能なものであり、全く機能に基づく、完全にマッチングする基本的な形状ではないので、被告の上記主張は受け入れられない。このように、係争意匠の取り外しツールは「視覚性」を兼ね備えているので、視覚に訴える創作である。
三、結論
裁判所は、本件の係争意匠が「純機能的な物品の形状」であって、意匠登録を受けることができない意匠であるかについて、主に、「係争意匠の取り外しツールは、オイルパンのドレンプラグを取り外すためのものであるのに対し、係争商品も同一の用途であるが、その駆動端の中央には、「一字状の凸部」が設けられていることから、係争意匠と係争係争との、駆動端の外観設計が同一ではないことが分かる。故に、取り外しツールと止めネジ及びドレンプラグとは、形状が必ずしもマッチング(must-fit)できるものではないことから、係争意匠の取り外しツールは「視覚性」を具備しており、視覚に訴える創作に属するものである」とした上で、被告の主張は成立しないと認定した。
台湾の審査基準には、「物品の形状が全く物品の機能に基づくものであり、視覚的外観を施すことが可能ないかなる創作スペースもない創作である場合、即ち純機能的な物品の形状である」ことが記載され、純機能的な物品の形状とは、例えば、ねじとナットのねじ山、鍵穴と鍵の溝と歯などが挙げられる。ただし、物品の形状が、全く機能に基づくものでなく、視覚的な特徴も含んでいる場合、その形状を純機能的な意匠と認定してはいけない。従って、審査段階で上記のような拒絶理由を受け取った場合、本件判決のように、同一のまたは類似する機能を達成できる、同一分野で外観の異なる証拠を提出すると共に、意匠が「純機能的な意匠」ではないことを主張することにより対応できると考える。
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