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中国におけるコンピュータープログラムに係る専利審査指南の改正について

中国におけるコンピュータープログラムに係る専利審査指南の改正について

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BY 編集部


中国専利審査指南が改正され、今年2024年1月20日より施行されます。今回改正されたのは、コンピュータープログラムに関する専利審査指南第二部分第九章を含み、改正部分の概要は以下の通りであります。
 
一、前回改正


2010年2月1日に施行された《専利審査指南》が公布されて以来、六回改正されており、そのうち、中国国家知識産権局による法令改正が三回と公告の改正が三回含まれています。また、以下の二回の改正は第二部分第九章に関するものであり、主な改正ポイントは以下の通りです。


● 局令第74号:主に「コンピュータープログラムに係る発明」は「コンピュータープログラムそのもの」に相当しないが、コンピュータープログラムにおけるプロセスの特徴で限定されたコンピューター読み取り可能な記録媒体を保護対象とすることができる。

● 局令343号公告:人工知能、インターネット、ビッグデータ、及びブロックチェーンなどの技術分野に特殊性を有することから、新たに第6節「アルゴリズムの特徴又は商業的規則及び方法の特徴を含む特許出願の審査に関する規定」が追加された。

 
二、今回の改正ポイント

1.「コンピュータープログラム製品」を請求対象とする特許出願が認められます

インターネットの普及により、コンピュータープログラムはディスクなどの記録媒体に記憶できるだけでなく、インターネットを通じて信号の形式で送信及びダウンロードすることができ、そのコンピュータープログラムに対する保護を高めるために、今回の改正後の審査指南では、有形の記録媒体に限らず、コンピュータープログラム製品も請求対象として特許出願することが認められました。また、コンピュータープログラム製品とは、「主にコンピュータープログラムを通してその解決方案が実現されるソフトウェア製品」のことです。

専利審査指南第二部第九章第5.2節に新たに追加された事例4において、「画像のノイズを除去する方法」に関する特許出願は、方法や、装置、コンピューター読み取り可能な記憶媒体、コンピュータープログラム製品などの四つの異なるカテゴリーの請求項として記載することができ、そのうち、「コンピュータープログラム製品」に関しては、「コンピュータープログラム/指令を含むコンピュータープログラム製品であって、前記コンピュータープログラム/指令がプロセッサより実行される際に、請求項1に記載の方法のステップを実現することを特徴とするコンピュータープログラム製品」と記載することができ、そのうち、請求項1に記載されるのは画像のノイズを除去する方法であり、前記「コンピュータープログラム製品」の請求項は請求項1を引用する、引用記載形式で記載された独立項です。

2.人工知能、ビッグデータの発明に関する新しい審査基準内容を追加

審査指南第二部第九章第6節において「アルゴリズムの特徴又は商業的規則及び方法の特徴を含む特許出願の審査に関する規定」に関する改正が最も大きく、それによると、発明の定義、創造性の判断方法、及びそれらに対応する解説と事例が新たに追加されており、そのうち、第6.1.2節において人工知能やビッグデータに関する発明が専利法第二条第二項に規定する発明の定義に該当するかについての説明が追加されました。

(1)アルゴリズムを通じてコンピューターシステムの内部性能の改善を実現することは、発明定義を満たすことができます

請求項に記載されている内容は、人工智能、ビッグデータのアルゴリズムの改善に係る技術方案であり、且つ、該アルゴリズムがコンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連を有し、如何にしてハードウェアの演算効率または実行効果を高めるかという技術課題を解決することができ、これにより自然法則に合致したコンピュータシステム内部の性能改善という技術効果を獲得できた場合、該技術方案は発明定義を満たしていると言えます。

更に、審査指南第二部第九章第6.2章に追加された事例5は「ディープニューラルネットワークモデルの訓練方法」であり、該モデルの訓練方法はサイズの異なる訓練データに対し、異なる処理効率を有するシングルプロセッサ方案、または、マルチプロセッサ訓練方案のいずれか適したものを選択することができます。また、該モデルの訓練方法とコンピュータシステムの内部構造には特定の技術的関連が存在しており(即ち、シングルプロセッサ又はマルチプロセッサをを選択して訓練を実行する)、訓練過程中のハードウェアの実行効果を向上させ、訓練の速度が遅いという技術課題を解決することができ、それにより自然法則に合致したコンピュータシステム内部の性能改善という技術効果を獲得できることから、発明の定義を満たしていますので、特許出願できる保護対象となります。

(2)、特定技術分野におけるビッグデータ処理に関する判断基準を追加

解決方案の処理するものが特定の応用分野のビッグデータであり、分類、クラスタリング、回帰分析、ニューラルネットワーク等を利用してデータのうち自然法則に合致した内在関連関係をマイニングし、それにより、如何にして特定の応用分野のビッグデータ分析の信頼性、又は正確性を向上させるかという技術的課題を解決し、かつ対応する技術的効果が得られる場合、専利法第二条第二項に規定の発明の定義を満たすことになり、適格な請求の対象に属します。ただし、特許請求の範囲においてどの応用分野であるのかを明確に限定しなければなりません。

更に、審査指南第二部第九章第6.2節において、新たに3つの事例が追加されており、その中、発明定義を満たすビッグデータ処理方法を説明するために、事例6に記載の「電子クーポンの使用傾向度の分析方法」、及び事例7に記載の「知識グラフの推理方法」が挙げられています。一方、事例10における「金融商品の価格予測方法」は、履歴価格に基づいて未来価格を決定できるわけがないことから、両者の間には、自然法則に合致した内在関連関係が存在せず、技術問題を解決できなく、そのうえ、技術効果も得られませんので、発明定義を満たしていません。

3.アルゴリズムによりコンピュータの内部性能の改善を実現することに関する創造性の審査を追加

審査指南第二部分第九章第6.1.3節において新たに追加された説明の通り、アルゴリズムがコンピューターシステムの内部構造と特定の技術的関連を有し、コンピューターシステムの内部性能の改善を実現し、ハードウェアの演算効率または実行効果を高め、例えばデータメモリ量の減少、データ送信量の低減、ハードウェア処理速度の向上などを含む場合、該アルゴリズムの特徴が技術的特徴と機能上支持し合い相互作用関係にあると認めることができ、創造性審査では、アルゴリズム特徴の技術方案への貢献を考慮すべきです。

 更に、審査指南第二部分第九章第6.2節の事例15に記載の「ニューラルネットワークパラメータを適合させるための方法」について、コンピューターシステムが該方法によりニューラルネットワークデータについて演算した場合、ハードウェアが効率よくデーターを処理できると共に、ハードウェアの演算効率も高めることができることから、創造性を有するか否かを判断するときに、該演算方法が技術方案への貢献を考慮すべきです。

4.ユーザ体験の向上に関する創造性の審査を追加

審査指南第二部第九章第6.1.3節に言及された通り、特許出願の解決方案がユーザの経験の向上を齎す場合、創造性の審査においては、この点を考慮しますが、該ユーザー体験の向上は技術的特徴によって齎され、又は発生したものでなければならなく、或いは該ユーザー体験の向上が技術的特徴、及び技術的特徴と機能上支持し合い、相互作用関係を有するアルゴリズムの特徴又は商業的規則、及び方法の特徴とが共に齎す、又は発生したものでなければなりません。

今回改正の審査指南では6.2節の事例13が改正され、その中、物流配送方法において、「物流配送者の操作が便利になり、注文ユーザーがリアルタイムに受取通知を受け、荷物配送者と受取人双方のユーザ経験が向上できたとのような効果の改善は、技術的特徴によって齎されたものであることから、発明の創造性を判断する時に考慮しなければならない」ことが補足説明されました。

また、ユーザー体験の向上はユーザー個人の主観的なものであるため、専利明細書において、このような技術効果を記載したとしても、実際に創造性を判断する時、該技術的効果と技術的特徴との関連性を注意しなければなりません。例えば、物流配送方法が特定の演算方法により最適な配送経路を計算し、荷物配送時間を短縮できることで購入者が荷物をより早く受取ることが可能になり、ユーザーの満足度向上に繋がることから、アルゴリズム全体の創造性へ貢献が判断されるべきです。それと反対に、購入者が配達員により多いチップを支払うことを選択することにより、優先配達となった場合は技術方案に属さず、創造性に貢献したとは言えません。
 
三、結論

今回、部分的に改正されたコンピュータプログラムに係る審査指南では、コンピュータープログラムの記憶媒体に限定されることなく、コンピュータープログラム製品の専利適格性が認められるようになりました。しかし、コンピュータープログラム自体は依然として発明の定義を満たすものであると認められていないため、コンピュータプログラムに係る発明の記載方法は、方法、装置、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、コンピュータプログラム製品などのカテゴリとして記載するすることができます。一方、人工知能とビッグデータ処理に関しては、審査指南では、発明の定義や創造性の判断について新たな解説とその対応例を掲載しており、出願人が特許出願や答弁を行う際の参考資料として利用できます。
 
※ご不明点がございましたら、お気軽にipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。

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