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BY 陳建穎
マーカッシュ形式(Markush Type)とは、一般的な請求項の記載方式で、特に医薬、化学分野においては広く使用されており、同一の群の複数の選択肢を1つの請求項にまとめた記載方式である。このマーカッシュ形式は、多く使用されているが、その内容により、発明の単一性に関する規定に違反する可能性があるので、以下では、マーカッシュ形式の請求項の発明の単一性について説明する。
台湾専利審査基準第二篇第十三章の「6. 発明の単一性」における「6.1.1 マーカッシュ形式の請求項」には、「マーカッシュ形式との択一の記載形式により請求の範囲を限定する時、択一形式の各選択肢(alternatives)に類似の本質(nature)を有する場合、各選択肢は相互に技術的に関連しており、同一又は対応する技術特徴を有する」との説明を有し、即ち、マーカッシュ形式の請求項においては、選択肢ごとに発明の単一性の要件を満たさなければならない。
また、前記「類似の本質」の判断について、前記審査基準の同段落では、次のように規定されている。即ち、下記条件(1)、及び(2a)又は(2b)である。
条件(1) | 全ての選択肢が共通の性質又は活性を有すること。 |
条件(2a) | 全ての選択肢が共通の構造を有し、即ち、全ての選択肢が1つの重要な化学構造要素(element)を共有していること。 |
条件(2b) | 共通の構造に統一的な判断標準はないが、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、全ての選択肢が“公認された化合物群”に属することを認識できること。 |
次に、例を挙げて前記条件(1)~(2b)について説明する。
・例1
【請求の範囲】
1.一般式(1)
…(1)
で表される化合物。
(式中、…Zは、F、又はCOOCH3である。)
【明細書の記載】
…一般式(1)において、ZがFである場合、水に対して溶解性に優れたものとなる。
…一般式(1)において、ZがCOOCH3である場合、水に対して溶解性はかなり低くなるが、信頼性に優れたものとなる。
【説明】
一般式(1)中、ZとしてF及びCOOCH3との2つの選択肢が存在しているが、それらの選択肢は、共通の性質又は活性を有しているとは言えないことから、前記条件(1)を満たしていないので、該請求項は、発明の単一性を満たしていない。
・例2
【請求の範囲】
1.一般式(A)
…(A)
で表される化合物。
(式中、Xは、H、F、Cl、COOH、炭素数1~3のアルキル基、又はベンジル基である。)
【注】
共通の構造(-X以外の部分)との技術特徴は、先行技術に対して貢献を齎す特別な技術特徴であり、且つ全ての選択肢の化合物は何れも、共通の薬品特性を有する。
【説明】
一般式(A)において、全ての選択肢が、共通の構造(-X以外の部分)を有し、即ち、全ての選択肢が1つの重要な化学構造要素(element)を共有し、且つ全ての選択肢が共通の性質を有することから、前記条件(1)及び条件(2a)を満たしており、且つその共通の構造との技術特徴は、特別な技術特徴であるので、該請求項は発明の単一性を満たしていると言える。
・例3
【請求の範囲】
1.一般式(X)
…(X)
で表される、ジフェニルアゾール化合物。
(式中、B1及びB4はそれぞれ独立して、炭素原子又は窒素原子を示し、B2及びB3はそれぞれ独立して、窒素原子又はCHを示し、なお、B1が炭素原子である場合、B2は窒素原子又はCHであり、B3及びB4は窒素原子であり、また、B1が窒素原子の場合、B2は窒素原子であり、B3は窒素原子又はCHであり、B4は炭素原子である。)
【注】
一般式(X)は、新規の化合物であると共に、先行技術から容易に完成させることができるものではなく、且つ全ての選択肢の化合物は何れも、共通の防虫特性を有する。
【説明】
一般式(X)は一見、B1~B4にそれぞれの選択肢があり、共通の構造は、先行技術である2つのフェニル基のみであるが、請求項には、該化合物がアゾール化合物であることが明確に記載されており、即ち、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、その請求項の内容に基づいて、“一般式(X)で表される化合物において、何れの選択肢を選んでも、該化合物が、2~3つの窒素原子を有するアゾール化合物”に属すると認定でき、また、全ての選択肢の化合物は、共通の特性を有することから、前記条件(1)及び条件(2b)を満たしており、且つそのような化合物は、新規の化合物であると共に、先行技術から容易に完成させることができるものではないので、該請求項は発明の単一性を満たしていると言える。
・結論
上述したように、マーカッシュ形式の請求項は広く使用されているが、注意すべき点は、各選択肢は、前記条件(1)及び条件(2a)又は(2b)を満たさなけらばならない。
また、各選択肢に同一の性質又は活性を有しない場合、発明の単一性のみならず、記載不備(明確性)に関する規定に違反する可能性もある。
このように、マーカッシュ形式の請求項は、一般的な請求項の記載形式であるが、発明の単一性、記載不備の問題を避ける点、及び請求の範囲を明確に解釈できる点から、その内容に留意したものでなければならない。
※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。