台湾商標登録出願案内
質問:台湾における商標登録出願実務について
回答:
台湾商標登録出願に関する実務を以下にて案内申し上げます。
商標登録出願に必要な書類は委任状のみであります。又、委任状につきましては、出願人の代表者のサインを受けて頂くか、若しくはその代わりに社印(角印)及び代表取締役印(会社実印)をご捺印頂く必要があります。
台湾においては、1枚の委任状でこの先同出願人のあらゆる商標登録出願に援用することができます。
商標登録出願の審査には、8ヶ月乃至14ヶ月程要します。
日本における商標出願を基に優先権を主張する場合は、日本特許庁よりの出願証明書が必要となります。又、優先権主張に用いる日本出願証明書等の書類は、願書の提出後3ヶ月以内に追補することができます。
登録査定された商標について、当該査定通知書送達日後から2ヶ月以内に登録料を納付しますと、その後登録公告がなされ、商標登録証が発送されます。また、期間内に登録料を納めないときは、登録公告がなされず、原登録査定はその効力を失うことになります。
商標公報は毎月の一日並びに十六日に発刊され、公告は3ヶ月間行われます。
商標権の存続期間は登録日から10年であり、存続期間満了前6ヶ月から満了日までの間に存続期間更新の登録出願をすることにより10年の権利の更新をすることができます。又、更新登録料と同額の割増登録料を納付することにより、期間経過後6ヶ月以内であれば更新登録の申請を行うことができます。
商標更新の際に必要な書類は委任状(出願用のものと同一)のみであります。
商標更新登録出願の審査には、2ヶ月程度要します。
実際に使用していない商標であっても登録を受けることができます。但し、中華民国商標法第63条第1項第2号の規定により、商標権者または使用権者が三年以上継続して、台湾国内で登録された商標を正当な理由なく使用していない場合においては、その商標の登録を取り消す審判を受ける恐れがあります。
外国出願に基づく優先権の主張について
質問:外国出願に基づく優先権の主張について
回答:
● 外国出願に基づく優先権の主張につきまして、台湾においては部分優先が認められ、即ち、基礎出願に記載していない指定商品を追加して出願することが可能であります。尚、この場合には、その外国出願の指定商品が範囲外のものに対し、「優先権主張無し」と注記することになります。
● 又、「優先権主張なし」として注記することは出願時には可能でありますが、指定商品が優先権範囲内のものであるか否かについて、その判断を審査官に委ねる場合には、以下の手順となります。
(A) 先ず該商標を出願します。
(B) 審査によって、その外国出願の指定商品が範囲外のものであると認められた場合には、審査官より『この商標登録に係る商標は、外国商標出願に基づき優先権を主張していることから、その優先権主張の基礎出願の指定商品の範囲内のものと、指定商品の範囲外のものとを区別して記載されたい。』との通知書が出されることになりますので、係る通知書に対し、範囲外の指定商品の優先権を主張しない旨の補正書を提出することになります。
● 尚、当事務所においては、係る通知書に対し、「優先権主張なし」として注記する旨の補正書の提出費用は、無料とさせて頂いておりますが、有る指定商品は確かに優先権範囲内のものであり、それらの商品の優先権を主張するための証拠資料を提出する必要がある場合には、多少費用を請求させていただいております。
アルファベット2文字の登録可能性
質問:アルファベット2文字の登録可能性について
回答:
単純な英文字、例えばアルファベットの「EK」であっても登録を受けることができますが、数字を含む「EK18」の標準文字である場合には、一般的に商品の型番(モデルナンバー)であり、識別力を有しないと判断される可能性があります。例えば、第6, 7, 9類区分等について使用した場合、一般的に商品の型番と認定されますが、食料品などに使用する場合には、商品の型番と認定される可能性は低いと考えます。
また、例えばアルファベットの「EK」に商品の名称を加えた商標(例えば「EKフィルム」など)の登録を受けることができますが、その内の「フィルム」の独占権を放棄する必要があると考えます。
商標の一部の独占権放棄(権利不要求)
質問:商標見本にある一部の独占権放棄について
回答:
商品の普通名称などの識別力の弱い文字が含まれる商標には、該商標の登録を受けるために、該識別力の弱い文字に係る独占権を放棄する必要があると考えます。例えば、「EKシステム」商標にある「システム」は商品の説明又は誇称に該当すると認定される場合、『「システム」の独占権を有しない』と注記することになります。
◎『「システム」の独占権を有しない』との注記は、出願時(無料)に可能でありますが、該独占権を放棄する必要があるか否かについて、その判断を審査官に委ねる場合には、以下の手順となります。
(A) 先ず該商標を出願します。
(B) 審査によって、『「システム」の独占権を放棄されたい。』との通知書が出された場合には、係る通知書に対し、「システム」の独占権を放棄する旨の補正書を提出します。尚、この場合の応答費用は請求されます。
異議申立に関する法的条文及び流れ
質問:台湾における商標を異議申立てる場合の法的条文及び流れについて
回答:
(一)商標を異議申立てる場合は、通常、以下の法的条文に基づき主張することができると考えます。
● 商標法第30条第1項第10号における「同一又は類似の商品又は役務について他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関係消費者に混同誤認を生じさせるおそらがあるもの。」との規定に違反するとの主張ができます。
● 商標法第30条第1項第11号における「他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のものであり、そのために、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの、又は当該著名な商標又は標章の識別性又は信用を損なうおそれがあるもの。」との規定に違反するとの主張ができます。
● 商標法第30条第1項第12号における「同一又は類似の商標又は役務について、他人が先に使用している商標と同一又は類似のものであり、かつ、出願人が当該他人との間に契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係を有することにより、前記商標の存在を知っており、模倣の意図を有し、出願によって登録を求めるもの。」との規定に違反するとの主張ができます。
(二)商標を異議申立てる場合の流れは、以下の通りであります。
(1) 特許庁へ異議申立(理由書及び証拠を含む。)を提起する。
(2) 特許庁が、異議申立人が提出した異議申立理由書を被異議申立人に発送する。
(3) 被異議申立人側が、異議申立人の異議申立理由書に対し特許庁通知書の送達の日から30日以内(期間延長可能)に答弁書を提出する。
(4) もし被異議申立人が答弁書を提出した場合、異議申立人は、その答弁書の内容について補充理由書又は追加証拠を提出することができる。
(5) 両者ともに補充理由書などを提出しない場合、審査官は、異議申立理由が成立するか否かについての審決を下す。
(6) 特許庁の審決に対して不服のある者は、経済部に訴願を提起することができる。
経済部の決定に対して不服のある者は、知的財産裁判所に訴訟を提起することができる。
(三)異議申立理由書が提起されてから結論(決定)が出るまでの期間については以下の通りであります。
(1) 異議申立請求書の提出後には、被異議申立人は答弁書の提出、また、両者共に補充理由書又は追加証拠の提出を行うことができますので、この段階に要する期間は案件毎に異なりますが、通常は4ヶ月~1年程度であると考えられます。
(2) 両者ともに補充理由書などを提出しない場合、審査官は、異議申立の理由が成立するか否かについての審決を下すことになりますが、それに要する期間は10ヶ月程度であります。
登録商標に対する3年不使用取消審判請求について
質問:台湾における商標に対する3年不使用取消審判を請求する場合の法的条文及び流れについて
回答:
(一)不使用取消審判を請求する場合は、以下の法的条文に基づき主張します。
● 商標法第63条第1項第2号における「商標権者又は使用権者が3年以上継続して、台湾国内で登録された商標を正当な理由なく使用していない場合においては、その登録商標に対して取消審判を提起することができる。」
(二)不使用取消審判を請求する場合の流れは、以下の通りであります。
(1) 通常、3年不使用取消審判を請求する場合には、先ず、興信所へ使用調査報告書を依頼する。その結果により、不使用取消審判を提起するか否かについて判断する。
(2) 特許庁へ3年不使用取消審判(理由書及び不使用調査報告書を含む。)を提起する。
(3) 特許庁が、請求人が提出した取消審判理由書及び不使用調査報告書を被請求人に発送する。
(4) 被請求人側は、請求人の取消審判理由書に対し特許庁通知書の送達の日から30日以内(期間延長可能)に答弁書を提出する。
(5) もし被請求人が答弁書及び使用証拠を提出した場合、請求人は、その答弁書の内容について補充理由書を提出することができる。
(6) 両者とも補充理由書などを提出しない場合、審査官は、取消審判理由が成立するか否かについての審決を下す。
(7) 特許庁の審決に対して不服のある者は、経済部に訴願を提出することができる。
(8) 経済部の決定に対して不服のある者は、知的財産裁判所に訴訟を提起することができる。
(三)不使用取消審判が請求されてから結論(決定)が出るまでの期間については以下の通りであります。
(1) 取消審判請求書の提出後には、被請求人から答弁書の提出や、両者から補充理由書又は追加証拠の提出を行うことができますので、この段階に要する期間はその案件毎に異なりますが、通常は4ヶ月~8ヶ月程度であると考えられます。
(2) 両者ともに補充理由書などを提出しない場合、審査官は、取消審判理由が成立するか否かについての審決を下すことになりますが、それに要する期間は2、3ヶ月程度であります。
同一人による、異議申立確定後の同商標に対する無効審判請求の可否
質問:同一人が、登録商標に対し異議を申立てた場合、その後、同登録商標に対し無効審判を請求することができるかについて
回答:商標法第56条においては、「異議申立についての決定が確定した登録商標に対しては、何人も、同一事実、同一証拠及び同一理由に基づいて無効審判請求をしてはならない。」との規定を有しますので、一般的に言えば、もしA氏がB商標に対し異議を申立てた事実があった場合には、その後、A氏は該B商標に対し無効審判を請求することはできなくなりますが、以下の状況も考えられます。
A氏は、異議申立において、商標法第30条第1項第12号における「同一又は類似の商標又は役務について、他人が先に使用している商標と同一又は類似のものであり、かつ、出願人が当該他人との間に契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係を有することにより、前記商標の存在を知っていると共に、模倣の意図を有し、出願によって登録を求めるもの。」との規定に違反することを主張したが、商標法第30条第1項第11号における「他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のものであり、そのために、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの、又は当該著名な商標又は標章の識別性又は信用を損なうおそれがあるもの。」との規定に違反することを主張しなかった場合、A氏は該B商標に対し、商標法第30条第1項第11号に基づいて無効審判を請求することができると考えます。