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出版品(特実意)
営業秘密と専利権保護の差異 (2023/2/24)

 編集部

一、前書き

知的財産権とは、専利権、商標権、著作権、及び営業秘密を包含する、人間の精神的な創作を保護する無体財産権であり、そのうちの専利権と営業秘密は、技術につながるものであり、企業の研究開発の成果を保護し、その競争力を高めることができ、また、専利権の保護を受けるには、知的財産局に専利の出願を提出する必要があり、特許査定を受け、専利権を取得した後、初めて専利権により保護される。但し、専利法は1944年の制定後から既に80年近く経ていることから、専利出願人は専利権取得手続きに精通しているが、営業秘密に関しては、法律が制定されてから30年も経ていないので、国民の営業秘密に対する認識は依然として不十分である。更に、近年、営業秘密が侵害されたニュースが幾度となく取り上げられ、特に国家安全法の改正後、衝撃を受けた企業の、研究開発成果を保護する方法としては逆に、営業秘密を採用する傾向がある。しかしながら、実際は、両者は必ずしも、相容れないものであるとは限らないことから、専利権と営業秘密による保護を共に考慮することもできるので、その応用をよく行うと、発明の成果をより全面的に保護することができる。

二、保護要件と保護期間

営業秘密法第2条には、「本法での営業秘密とは、方法、技術、製造プロセス、レシピ、プログラム、設計、又はその他生産、販売若しくは経営に利用できる情報であって、次の要件を満たすものである。

一、一般的にそのような情報に関与する者が知り得るものでない場合
二、その秘密性による実際又は潜在の経済的価値を有する場合
三、所有者が合理的な秘密保持措置を講じている場合。」

との規定を有することから、前記営業秘密法第2条に規定された「一般的にそのような情報に関与する者が知り得るものではない」、「経済性」、「合理的な秘密保持措置を講じている」との3つの要件に該当する場合は、登録を必要とせずに営業秘密法により保護され、且つ時間制限はなく長期間にわたって保護を受けることができるが、営業秘密の技術が開示されたり、又は自身の不適切な管理により、合理的な秘密保持措置が講じられていなければ、営業秘密の要件に該当しない。

一方、専利は、知的財産局に出願しなければならなく、発明専利を例にすると、審査で「産業上の利用可能性」、「新規性」及び「進歩性」が認められ、且つ明細書及び特許請求の範囲が専利法第26条などの規定を満たす場合には、専利権が付与され、その保護期間は出願日から20年であり、また、医薬品又は農薬品については、延長の条件を満たす場合、更に5年を超えない期間の延長を申請できる。但し、一旦専利権の期限が切れると、何人も利用することができ、公的財産となる。

三、保護の効果について

専利法第58条第1項における「発明の専利権者は、本法で別段の規定がある場合を除き、他人がその同意を得ずに、当該発明を実施することを排除する権利を専有する」との規定によると、専利権者は、専利権により保護された技術を使用する第三者を発見した場合、専利法に規定された「専利権の効力が及ばない事由」を除き、当該第三者が主観的に故意又は過失があるかにかかわらず、当該第三者の実施を排除でき、言い換えると、好ましくは研究開発の前に、事前に検索を行うことにより、研究開発するものが専利保護を受けているかを確認し、更に、販売する前に再確認を行うべきであり、そうしなければ、一旦商品が市場に参入してしまうと、専利権の侵害が発生し、損害賠償の負担に加え、商業的な契約違反のリスクに直面する虞がある。このような事態に対し、専利権者は、専利権の保護により、その後他人が独立して同じ技術を開発したことを恐れる必要がない。

一方、営業秘密について、台湾で営業秘密法が制定された時には、「リバースエンジニアリング(Reverse Engineering)により営業秘密を取得するとは、第三者が合法的な手段で営業秘密を持つ物を取得した後、その成分、設計を分析することにより、係る営業秘密を取得することであり、それは、第三者が自ら研究開発した成果であり、不公平な競争の手段ではない」ことが明確に記載されているので、第三者が独立して営業秘密技術を開発した場合、営業秘密の所有者は、第三者の使用を排除できないことから、営業秘密の排他的効果は、専利権より強いものではなく、且つ不法行為の場合でなければ、救済を請求することができない。

四、専利権と営業秘密の両者による同時保護

専利を出願するには、通常の知識を有する者がそれを実現できるように専利明細書を提出する必要があるが、その記載の程度は、非常に詳細なものを必要とせず、専利法の規定を満たすものであればよく、また、実際には、製品の商品化の過程で、如何なる産業においても、生産プロセスに係る条件を再度最適化するので、その最適化された条件は、営業秘密により保護でき、それは、医薬品、化学品の分野でよく見られ、例えば、成分A、B、Cなどを含むクリーン組成物が開発された時、専利明細書にA、Bのみを開示しているが、専利法の規定を満たすと専利権を取得でき、一方、成分Cについて、係る成分がリバースエンジニアリングで容易に得られるものではない場合には、当該成分Cを営業秘密として保護してもよい。また、医薬品の場合、人々は習慣的に先発医薬品を好み、且つ通常服用している薬を変更することはしない。その主な理由としては、「各メーカーの薬品は、病気を治療する活性成分として同様のものが使用されているが、生産プロセスの条件や賦形剤には依然として差異がある」からであり、また、患者の薬物使用の好みも、それらの差異によるものであることから、専利と営業秘密による保護は確かに並行することができることがわかる。

さらに、開発された技術がキーテクノロジーであり、競合他社が多額の投資を行うと予想される場合は、専利レイアウトを先取りすることにより、広い保護範囲を取得することを考慮しなければならない。また、その技術が他人により容易に完成し得るものである場合は、専利の保護を請求しなければ、「競合他社がリバースエンジニアリングにより、製品の技術を知った後、当該製品の技術に対して将来の研究開発戦略を策定し、専利の出願を先取りする」ことを防止できず、逆に後進者により告訴されるという悪状況に陥ることになる。

五、結論

前記説明からも分かるように、営業秘密と専利権による保護は、相容れないものではなく、権利者の研究開発の成果が最大限に保護できるかは主に、「権利者が両者を適切に利用するか」により決める。最近では、国家安全法の改正に合わせて、台湾の知的財産案件審理法も、多くの議論、公聴会を経た後、改正案が提出され、2022年12月26日に立法院の初審査で可決されたが、専利対審制度に関する規定が削除されており、その原因は、専利法改正案が依然として行政院で審査されていることであり、かつ法案の改正も議論にかなりの時間をかける必要がある。ただし、営業秘密のみにフォーカスすると、専利権保護の重要性を見逃す可能性があり、「知的財産権の保護は、単一の権利ではなく、全体的な思考に基づくべきである」ことを見落とすことになる。

※上記文章について何かご質問がござましたら、ぜひご遠慮なく、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。 

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