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事例(商標)
知的財産局による「孔子」商標登録事件

商標審査の視点から見ると、商標法では「氏名」の商標登録の可能性を排除することはしなく、その「氏名」の商標は、商品又は役務の出所を表彰する機能を有するので、原則として歴史上の人物を商標として出願することは可能であり、誰もが知っている自動車の「リンカーン」や、チョコレートの「モーツァルト」、ファンドの「フランクリン」などがその例である。台湾では、係る指定商品或いは役務が該人物有名な事跡に関連しないものである場合、氏名でも登録を受けることができるが、ある国では、氏名を商標として登録を受けることはできないとの厳格な規定を有する。

本件「孔子」商標は、中国大陸の教育部に属する対外漢語教学発展中心より「台湾における大陸地区人民に対する特許及び商標登録作業要点」の規定に基づいて出願し登録を受けたことから、このことをマスコミが大々的に報道し、民衆の関心事となっている。該出願人は、中国大陸の教育部に属する事業単位の一つであると共に、独立法人の資格を持ち、1987年より該中心は主に漢語教学をその任務とし、世界各地に「孔子学院」を成立し漢語教育を推し広めており、「孔子」、「孔子学院」及び「孔子講堂」を知的財産局へ出願し、その登録も受けている。但し、単に「孔子」との二字で商標登録を受けるべきであるかについて、該商標登録公告を行った際に、知的財産局の商標権組の内部で検討を行った結果、単に「孔子」との二字の商標に対して、教育サービスに係る商品或いは役務を指定した場合、商品或いは役務の出所を識別しづらいことから、商標法の関連規定に従い知的財産局自ら無効審判を提起した。

歴史上の人物を、商標として登録を受けることができるか否かについては、各国における審査結果が異なっていることから、知的財産局では、来年度の「商標識別性審査基準」の内容改正において、わが国の国情を考慮すると共に、世界各国の人物名称登録規定を参照し、更に専門学者を招き討論を行い、審査基準改正の参考とする予定である。

更に、商標法第30条第1項第1号の規定によれば、商標としてではなく、善意かつ合理的な使用方法によって、本人の氏名、名称或いは本人が提供する商品又は役務に関する名称、形状、品質、機能、産地その他の説明を表示するものは、他人の商標権の効力に拘束されないので、「孔子」二字は登録を受けたとしても、他人が該二字を使用することができなくなるわけではなく、何人も善意かつ合理的な使用方式に基づけば該二字を使用することができる。即ち、「孔子伝」を出版したり、孔子学術講座を開催すること等は、「孔子」商標権の効力に拘束されない。

 

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