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出版品(商標)
行政院院会は10月26日に「著作権法」改正草案を可決 (2018/01/03)

行政院は、2017年10月26日に開かれた、第3573回の行政院会において「著作権法」改正草案を可決した。台湾の著作権法は、20年近く全面的な改正がなされていないことから、デジタルテクノロジー及びインターネットの高度な発展に対応すべく、知的財産局は2010年から法改正を推進し始め、47回の法改正諮問会議・6回の公聴会の末、国際条約及び先進国の著作権法制度を参酌して著作権法全面改正草案が提出され、その後、行政院院会において5回の審査会議を経て可決された。可決された改正草案は、計145条を有し、そのうち、改正された条文数は計93であり、新設された条文数は計17であったので、約8割が改正されたことになる。

今回の著作権法の改正ポイントは、以下の通りである。

一、「公開放送」及び「公開伝送」の定義の改正、及び「再公開伝達権」の新設。

  1. ネットワーク帯域幅の向上及びテクノロジーの進歩により、ネットワーク配信による番組又はラジオは既に普及していることから、現在のデジタルコンバージェンス環境に合致させるために、今回の改正後では、一般的なテレビ放送であるか、若しくはライブ配信であるかを問わず、何れも公開放送に属するものとし、通信技術により区別しないものとされた。
  2. 著作権者に対する保護を向上させるために、再公開伝達権を新設する。例えば、営業場所でネットワーク及びスクリーン設備を通じて映像を放送する場合には、権利者の同意又は許諾を得なければならない。これが再公開伝達権である。

二、実演家の権利の改正。

今回の改正は、国際的趨勢に対応するためであり、例えば、DVD等の視聴覚物における出演者が、現行のCDを収録した歌手と同等の権利を享有できるようになる。

三、著作財産権の制限の改正。

著作権法は、著作者の権益を保障すると同時に、社会の公共利益との調和をとる必要もあることから、今回の改正草案では、民衆による著作物の合法的使用に対する保護について、以下のような改正を行った。

  1. テクノロジーの発展に伴い、テクノロジーを運用して授業の遠隔教育を行うことにより教育効果を向上させるというニーズに応えるために、学校における遠隔授業の合法的使用に関する規定を新設する。
  2. 読書のデジタル化の趨勢を考量し、図書館等の典籍を所蔵する機関は、適切な要件を満たした上で、読者に館内でのオンライン閲覧を提供することができる、との規定を新設する。
  3. 経常的に開催される非営利活動で、許諾を得ずに他人の著作権を使用する場合に刑事責任を問われる虞があるとの問題について、今回の改正草案によれば、今後、経常的に開催される非営利活動については、それに見合った使用料金を支払えば、権利者の同意又は許諾を得ずに使用できることになる。また、民衆が日常生活において心身健康のために行う、公園でのダンス等の活動について、民情に合致させるために、今回の改正草案では、自ら設備を用意して音楽を放送する場合、許諾の取得又は支払いをせずに使用することができる、との規定を特別に新設した。

四、著作財産権者が不明な場合の強制許諾の新設。

文化産業の発展を促進するために、年代が古いため、若しくはその他の原因により、著作財産権者の身分が不明である、又は著作財産権者の所在が不明である著作物について、許諾を取得できず使用できない場合、文化の伝承及び流れの障害となることから、今回の改正により、現行の「文化創意産業発展法」中の不明著作の強制許諾に関する規定を著作権法に移行し、また、時効との兼ね合いを考慮し、出願人の主務官庁から許可を待つ時間を短縮するために、今回の改正草案では、出願人は審査期間において保証金を供託すれば、先に使用することができる、との規定を新設した。

五、時代にふさわしくない刑事責任の規定の改正。

現行の規定では、一部の著作権侵害について法定刑の下限を6ヶ月としていることから、比較的に軽微な犯罪案件が過重な刑事責任を問われ、バランス性が失われている、との問題点が存在するので、今回の改正草案では、該規定の下限を削除し、裁判所が個別に案件を参酌することとし、更に、許諾を得ずに海外から正規品を輸入し、国内で販売する行為についても刑事責任が問われないこととなる。尚、許諾を得ずに正規品を配布する行為については、海賊品の配布による帰責性を区別すると共に、民情に合致させるために、民事的手段による紛争の解決が適当である。

今回の「著作権法」改正草案は、約20年ぶりの大幅改正であり、これにより、著作権者に対する保護が向上することから、権利侵害行為を有効的に抑止することができ、又、権利侵害とならずに、民衆による著作物の合法的使用が保障されることから、社会的利益との調和がとれると共に、わが国の文化産業の発展及び創意の付加価値を促進し、国家全体の競争力の強化にも繋がる。このように、今回の改正草案は、行政院が主導する「アジアのシリコンバレー推進計画」の法制整備の一環であり、知的財産局は、親しみやすいデジタル経済法制の構築により、デジタル時代におけるわが国の著作権法制の環境をより優れたものに向上させるため、積極的に立法院での三読通過に向けて推進していく所存である。

原文のリンク先(台湾知的財産局サイト)

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