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出版品(特実意)
台湾における遠隔診療に関する特許出願状況 (2021/12/14)

 弁理士 簡 偉倫(特許日本部)

前言

遠隔診療は、1960年代に米国で行われたマーキュリー計画で最初に実現された。当時、NASAが、宇宙飛行士が宇宙に滞在する時の身体機能を観察するために、即時返却システムを設計した。それ以来、遠隔診療の発展は、遅々としていたが、近年、AIアルゴリズム、5G伝送技術、モバイル決済、ブロックチェーンなどの技術の成熟により、遠隔診療の精度が向上し、そして、この2年で、新型コロナウイルスによる感染拡大の予防対策として、遠隔診療の認知度が上がった。

遠隔診療の著しい発展に伴い、台湾の経済部が発表した2020/2021産業技術白書にも、医療データ開発、精密医療、人工知能医療画像診断などの遠隔診療関連プロジェクトのガイドラインが記載されている。そして、2021年以降、遠隔診療は台湾の健康保険の支払い範囲に正式に含まれるようになった。

一方、Mordor Intelligenceの調査データによると、世界の遠隔診療の市場は、2020年には約382.89億米ドルに達し、2026年には1683.9億米ドルに達すると予想されている。

台湾における特許出願状況

台湾専利検索センターの調査によると、遠隔診療や、遠隔医療、インターネット、アプリケーション、患者、医療スタッフなどの用語をキーワードとし、出願日や優先日が2000年1月1日~2020年12月31日である特許文献を検索した結果、この20年で、台湾における特許出願は、僅か1100件であり、その中、主な出願人は台湾の学術研究機関、例えば、工業技術研究院、成功大学、元智大学であり、また、IPC別から見ると、一位はG06Q 50/22(ヘルスケア,例.病院;社会福祉事業。一方、全世界の出願から見ると、一位がA61B 5/0205(心臓血管の状態と人体状態の種々の型の両方を同時に評価するもの,例.心臓と呼吸状態))であることが分かった。

更に調査すると、この5年間に提出した出願のうち、5割以上の出願には、モバイル決済や、ブロックチェーン、手術、ヘルスケア、内視鏡アプリケーションなどの内容が記載されている。

まとめ

遠隔診療の技術開発においては、米国が最も先進しており、年間4,000件を超える関連出願が継続的になされている。そして、二番目は中国であり、特にこの5年で、関連出願件数の成長は、米国を超え、約60%成長し、直近では米国に並ぶ水準の特許出願がなされている。一方、台湾では顯着な成長が見られていなく、年間数十件程度の出願件数に留まっており、IP5に大きく遅れている状況にあるといえる。

そして、出願人別から見ると、世界の上位出願人は、ほぼ大手企業、例えば、米国のIBM、PHILIPSや、韓国のSamsungであるのに対し、台湾では、上位出願人が、全て学術研究機関である。

その原因は、台湾は人口や国土面積が小さいため国内市場が小さく、さらに、法令の制限が多いなどの乗り越えるべき課題があり、また、遠隔診療の発展は、各分野の企業の協力(cooperation)が必要であるが、台湾では、統合サービスを提供する企業が少ないことにあると思われる。

一方、遠隔診療は、希望する日時に受診でき、通院時間と交通費の必要がなく、また、院内感染のリスクがなく、医療事務の負担が軽減できるなどのメリットを有し、かつ、ICT(情報通信技術)の飛躍的進歩により、さらに遠隔診療が拡大すると見込まれているので、世界に追いつくため、台湾にとって、米国や中国企業の経験を学ぶだけではなく、国内の健康保険制度や消費者のニーズに応じて、法令を調整し、各分野の企業の協力関係を強化する必要があり、更に、適切な特許調査を行い、知財戦略を確立することが、最も重要な課題であると考えられる。

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。

参考資料:

台湾専利検索センターが発表した“New Vision of Patents for Telemedicine:5G Application Scenarios and Service Models”

 

 

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