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出版品(商標)
台湾における商標使用権設定登録の要否について (2021/10/28)

葉易雲

台湾の商標権を受けた商標権者が、他社に使用許諾を与える場合、台湾特許庁への使用許諾契約の届出は強制ではありませんが、使用権者が台湾に輸出入する際に、該輸出入しようとする製品が税関において、台湾特許庁に登録した該商標権者と異なる場合、税関にて差し押えられる可能性があります。その場合には、商標権者の同意書などの証明書類を税関に提出すれば通関できますが、手続に時間がかかりますので、台湾の税関による通関止めを防ぐために、台湾特許庁にて、使用権設定登録を行った方がよいと考えます。

上記を踏まえまして、使用権使用許諾に関する規定又は情報を纏めて以下にてご案内いたします。

(一) 特許庁への商標使用権設定登録は強制ではありませんので、両社間で商標権使用許諾契約書を締結すれば、特許庁より設定登録を受けていなくても、問題ありません。

(二) 台湾商標法第39条第1項、第2項においては、「商標権者は、その登録商標の使用を指定した商品又は役務の全部又は一部について、指定地区で専用使用権又は非専用使用権を許諾することができます。又、上記に規定した使用許諾は、商標主務官庁に登記していない場合、第三者に対抗することができない。」との規定を有しますが、その内容における「第三者に対抗すること」とは、該商標権の譲渡・使用許諾・質権設定などの権益について紛争がある場合、登録していない者は、当事者間で生じた法律関係の成立を第三者に主張できないという意味であります。例えば、商標権者A(ライセンサー)が「該商標」の使用権を使用権者甲(ライセンシー)へ許諾しましたが、特許庁より使用権設定登録を受けていなく、その後、商標権者が「該商標」の商標権を第三者に譲渡した場合、使用権者甲は新しい商標権者Bに対して使用権を主張することができません。

(三) 3年不使用取消審判を請求し、この時、特許庁より使用権設定登録を受けている場合には、使用権者よりの使用実績が使用証拠として認められます。一方、特許庁より使用権設定登録を受けていない場合には、以下の資料を提出しなければ、使用証拠として認められません。

(1)  商標権者及び使用権者の両社間で締結した商標権使用許諾契約書(取消審判が請求された場合、この契約書は、私的なものと指摘されるおそれがあることから、念のために公証を受けた方がよいと考えます。)。
(2)  使用権者よりの台湾向けインボイス、取引証拠資料、領収書などの写し。
(3)  散らし、カタログなど。

(四) 上述したように、台湾特許庁への商標使用権設定登録は強制ではありませんが、使用権者が輸出入する際に、該輸出入しようとする製品が税関において、台湾における該商標権者と異なることから、税関にて差し押えられる可能性があります。その場合には、商標権者の同意書などの証明書類を税関に提出すれば通関できますが、手続に時間がかかりますので、台湾の税関による通関止めを防ぐために、台湾特許庁にて、使用権設定登録を行った方がよいと考えます。

(五) 一方、未だ登録を受けていない、審査中の商標出願については、商標権を取得していないことから、許諾対象商標として商標使用権設定登録を受けることができません。

(六) 商標は、登録後において、「自ら商標に変更又は付記を加えることにより、他人の同一又は類似する商品又は役務について使用する登録商標と同一又は類似し、関連消費者に混同誤認を生じさせる虞があるもの」である場合は、台湾商標法第63条第1項第1号に該当し、その登録に対する取消審判を提起することができると共に、同条第2項には、「商標権者は、その商標の使用権者の行為が前項第1号に該当することを知っている、若しくは該行為を知り得るにもかかわらず、反対の意思を表示しない場合にも、同様とする。」と規定されておりますので、使用権者(ライセンスの登録・未登録を問いません)の不正な使用によって、商標登録自体が取り消されるリスクがありますので、ご注意ください。

(七) 商標権に係る使用許諾登録申請に必要な書類は、以下の通りです。

①   ライセンス契約書 

    ② ライセンサーの委任状


(八) 使用権設定登録手続き及びその登録設定までの流れは、次の通りです。

(1) 

授権使用登記申請書を特許庁に提出する。

(2) 

上記に述べた使用許諾登録出願後2ヶ月程度で、特許庁より許可通知書が送付される。

 

 

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